【特集 児童書の電子化動向】児童書電子化で出会うチャンスを拡大 電子図書館サービスの増加で児童書にニーズ

2022年3月2日

 コロナ禍で出版物は巣ごもり需要が発生したが、とりわけ電子出版は大きく伸びている。特に電子コミックの伸びが大きく注目を集めているが、一方で、公共図書館などで電子書籍サービスの導入が進んだこともあり、文字ものなど、そして児童書の電子書籍へのニーズも拡大している。ここでは、児童書の電子化について、これまでも絵本をネットで紹介・販売してきた「絵本ナビ」の金柿秀幸社長、電子図書館サービスの導入を進めている図書館流通センター(TRC)の細川博史社長に、児童書の電子化に取り組む意義や、それぞれのサービス内容などについて聞いた。

 

 出版科学研究所によると、2021年1~12月の電子出版市場は前年比18・6%増の4662億円と大幅に増加。このうち、電子コミックは同20・3%増の4114億円と4000億円台に達したが、文字ものを中心とした電子書籍も同12・0%増の449億円と2ケタ増となった。まだ電子書籍の売れ筋はビジネス書、自己啓発書、ライトノベル、写真集が中心だが、電子化されるタイトル数の増加にも伴って、今後さらなる市場拡大と、読まれるジャンルの広がりが期待される。

 

 特に、コロナ禍に伴って、公共図書館で電子図書館サービスを導入する動きが加速した。館内利用が難しくなる中で、非来館型のサービスとして注目され、政府の「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」で、活用事例の中に「図書館パワーアップ事業」として「地方公共団体が、図書館の蔵書を増やし、また、蔵書情報のオンライン化や、インターネットでの予約、郵送による貸出し等、読書環境の充実に向けた取組を実施するのに必要な経費に充当」と位置付けられた。

 

 TRCが公共図書館を中心に導入を進めている電子図書館サービス「LibrariE&TRC―DL」の導入自治体推移をみると、2010年の2自治体が毎年増えつつも、累計自治体数は19年で75自治体にとどまっていたが、20年には169自治体と倍以上に急拡大。さらに21年も増えて2月2日現在で247自治体に達している。

 

220225児童書電子化のサムネイル

 

 もともと公共図書館では児童書のニーズが高いことから、電子書籍についても児童書が求められているという。

 

 しかし、これまで児童書の電子化は、著者や出版社に無許諾コピーや発色など品質面での懸念があったり、紙の質感にこだわる意識が強いことなどから進んでおらず、コンテンツの拡充が課題になっている。

 

 今回話を聞いた「絵本ナビ」の金柿社長は、絵本を電子化することで、読者と出会うチャンスが広がり、その結果、紙の本を含めて購入の可能性が広がると指摘する。人々がスマートフォンなどで情報に接している今日、ネットなどで出逢う場を増やすことが必要だというわけた。そうして経験した人々が紙の本を購入できるサービスにも大きなニーズが生まれている。

 

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