4月24日に開かれたトーハン会代表者会議の第2部18年度施策説明会「書店が市場で勝ち残るために、今するべきこと!」では、桶川SCMセンターを軸とした新しい販売施策の全容が明らかにされた。高品質物流、責任販売の導入、店頭MD施策などについての各氏の発言内容を紹介する。
1.〈基本方針〉 小林辰三郎社長
現在決算を集計中だが、17年度の業績は前年に続きわずかながら増収を見込んでいる。要因としてコミックの売上増とゲオとの提携によるマルチメディア商品の売上増が寄与したが、書籍・雑誌は返品が増加し、両部門ともわずかながら前年を下回った。
経営基盤は地域書店
書籍・雑誌の販売は当社の基幹業務であり、十分な成果が出せていないことに忸怩たる思いがある。当社の経営基盤は地域に密着した書店との取引にあるが、ここ数年、閉店する書店も少なくなく、一層実効性のある対策が求められている。今年度は営業の原点とも言うべき地域書店の活性化というテーマが、さらに重要になる。
桶川計画は書籍返品物流を全面的に移管し、今年度は注文品物流の移管に着手する。完全稼働後には在庫量が業界最大の80万点に拡充し、取引先は他の追随を許さない物流・情報インフラを手にすることになる。さらに人の面を含めた営業インフラの再構築を目指す中期計画として、全国支店体制を見直す計画で、一部地域でテストを開始した。
当社はインフラを用いて特定の企業グループのみに偏らず、パートナーシップを結ぶあらゆる取引先に力の限り増売支援をする。
内部からの再販軽視は遺憾
このところ業界内部から再販制度を崩壊に導きかねない状況がみられることは、極めて遺憾と言わざるを得ない。
公正取引委員会は再販制度を無くす方向を示しているが、出版物の再販制度は我が国文化にとって、何より読者のために、今後とも確固として堅持しなければならない。
2.〈新しい販売モデルを創造する桶川SCMセンターの具体論〉池田禮常務
返品物流は4月1日から全面稼働し、これから注文物流を完成させる。注文品の稼働と合わせて昨年10月から一部稼働している出版QRセンターの出版社も拡大する。
センター4階にはブックライナーとEC事業の物流が入るが、広さは現状の2倍になり、3日だった納期が受注から2日で届くようになる。3階は補充注文用の在庫センターで、文庫センター、コミックセンター、専門書センター、本社商品センターなどすべての在庫を集結する。
アマゾンに取られている読者取りもどす
物流インフラの主要機能は、まず80万点の在庫で読者満足度を100%以上に高める。80万点とは当社が年に1冊でも出荷した全ての書籍。このうち上位20万点で売り上げの75?80%を占め、これを3階に在庫し、残り60万点を4階に在庫する。どこの流通にも負けない強い流通力によつて、アマゾンにとられている読者を店頭に取りもどす。
また、売れ行き良好や調整品など品薄商品についても、書店との契約販売で返品が出ない条件で商品を確保したい。
次ぎは納期管理とトレーサビリティー。正確な納期を即答できるようにする。そのためには書店の発注をすべて電子化(EOS)することが条件になる。在庫表示はトーハン在庫、ブックライナー在庫、出版社在庫を同時に表示する。また、有無以外の調整、品切れなど細かい情報も持つ。未刊情報も発売予定日を表示するなどして新刊予約ができるようにする。
トレーサビリティーは注文品の状況をインターネットで確認することができる。また、発注残も合わせて表示する。
検品レスを可能にする事前の納品データと品質保証は、事故率10万分の3を実現する。また、出荷する梱包ラベルごとの明細データを事前にネットで提供することで、店頭ではラベルを読み取るだけで入荷処理できるようになる。
戦略商品は混載しない
在庫拠点の集約による納期の短縮は、これまでに比べて0・5?1日短縮する。しかも、非在庫率は低くなるので、ほとんどすぐに届けられる。非在庫品についても何とか1週間以内で届けるように努力したい。
戦略商品の少量多頻度供給は、発注の中で機会ロスが高い商品、契約販売銘柄、欠品補充など、急いで供給することで売り損じを減らすことができる戦略商品は混載せずに最優先で届ける。
これについては店頭で識別できるようにラベルの色を変えたり、専用マークを付けることを検討している。また、出版輸送ができなかった休祭日にも何とか届けるよう取り組んでいる。
このほか、新刊配本の改善、ダンボールからオリコンへの移行、スリップレス注文、ロケーション別梱包などさまざまな改革を断行する。
ブックライナーについては、書店のアンケートで要望の多い雑誌や、CD、DVDなどの取り扱いを始めるためシステムを開発している。納期も3日が2日になる。