公正取引委員会は6月23日、東京・霞ヶ関の同委員会会議室で「第6回著作物再販協議会」(座長・石坂悦男法大教授)を開催した。公取委は出版業界で進んでいる弾力運用やポイントサービスについて評価し、インターネットでの謝恩価格本フェアを通年化するなどさらなる取り組みを求めた。また、出版業界代表の小学館・相賀昌宏社長は、書店の通年景品は1?2%が限度だとの考えを示し、配慮を求めた。
協議会は弾力運用の実施状況を検証するために、公取委と消費者団体、学識者、業界関係者によって01年から毎年開かれている。
これまで公取委は同協議会において、ポイント実施店への対応で再販維持の共同行為がみられることを指摘したり、複合出版物の価格表示の改善を求めるなど、出版業界への注文を表明してきたが、今回はインターネットでの謝恩価格本フェア通年化を求めるにとどまった。
また、公取委による弾力運用への評価は、98年に発表した是正6項目に沿って行われているが、今回は書店での通年景品2%を認めた公正競争規約改訂、取次による書店のポイントサービス支援、オンライン書店によるポイントサービスなどを弾力運用として評価した。
これに対して、相賀社長は出版業界での取り組みを説明するとともに、公取委が3年後に公正競争規約を再度見直すとしていることに対して、書店でのポイント還元は1?2%が限度であるとして、公正な競争が実現できるよう配慮を求めた。
公取委は出版業界の取り組みについて、次のような評価を示した。
ネット謝恩価格本を通年で
「時限再販・部分再販等再販制度の運用の弾力化等の取組み」については、昨年10月にブックハウス神保町が開設されたことと、日本書籍出版協会流通委員会が毎年2回開催している出版社共同企画「期間限定謝恩価格本フェア」が拡大していることを評価。
その上で「このような在庫品の値引き販売は、出版社および消費者の双方にとって有益なものであり、インターネットを利用した謝恩価格本フェアについても、通年利用できるようにすることが望まれる」と指摘した。
また、非再販本へのB印措置見直しを求めていたことについては、ブックハウス神保町で導入した可剥シールを評価した。
「各種割引制度の導入等価格設定の多様化」については、日本雑誌協会がホームページで紹介している再販弾力運用雑誌が1100誌に達していることを紹介。
「再販制度の利用・態様についての発行者の自主性の確保」では、昨年、出版再販研究委員会が、「個別の契約上の問題を検討することにより、事業者団体として、事業者間の取引の内容を拘束することがない」よう議決に関する条項を削除し、さらに、再販契約の主体者である出版社の団体(日本書籍出版協会)に事務局を移したことを報告している。
取次、オンライン書店のポイントサービスを評価
「サービス券の提供等消費者に対する販売促進手段の確保」では、出版物小売業公正競争規約の見直しによって「通年のポイントカード等を通じた景品提供(取引価額の2%の範囲内)が認められた」と報告。
さらに「一部の取次において、書店のポイントカード(購入額に応じて一定のポイントを与え、ポイント数に応じて購入代金の一部又は全部に充当出来るようにするもの)の導入をサポートし」と、日本出版販売が発表した書店向けのCRMシステム「HonyaClub」を、また、「一部のインターネット通信販売業者」として、楽天ブックスやアマゾン・ジャパンが実施しているポイント付与を、こうした動きとして紹介している。
「流通ルートの多様化や消費者の購読行動の変化及びこれらに対応した価格設定の多様化」では、05年にオンライン書店の市場が600億円(出版科学研究所調べ)に成長していることをあげ、あわせて「一定額以上の購入者を対象に、ポイントを提供したり、無料で配送を行うサービスが拡大している」とサービス面も評価している。
「取引関係の明確化・透明化その他取引慣行上の改善等」では、書店によるインターネットでの注文、在庫確認、販売情報交換が進展していること、取次各社の客注専門サービス、書店が共同でインターネットを使って直接出版社から客注を取り寄せるTS共同流通、返品許容量を設定した責任販売制、取次の雑誌定期購読サービス、出版倉庫流通協議会のICタグの実験などを紹介している。