大手取次2社が書店の経営状況をまとめた報告書を発表したが、売上高は日販調査で10年連続、トーハン調査で12年連続前年を下回った。トーハンが実施した「書店経営における先行き・見通し」では、「上昇」するという答えが3・3%にとどまったのに対して、「下降」が65・8%に達した。
トーハン「書店経営の実態」
トーハン「書店経営の実態」は、06年4月ら07年3月までの期間、取引書店171企業450店舗(前回調査164企業412店舗)の経営資料を分析した。
調査店の平均売場面積は161・2坪(同162・3坪)。従業者数の平均は社員2・5人(同同率)、パート・アルバイト4・8人(同4・7人)の計7・3人(同7・2人)。経常利益率が0・0%以上を「健全企業」、未満を「欠損企業」として分析した。
売上高伸長率は62・8%の企業でマイナスになったが、「健全企業」で98・9%(同98・4%)、「欠損企業」で95・8%(同96・5%)で平均は97・8%(同97・7%)で12年連続のマイナスになった。
粗利益率は平均22・1%(同22・0%)で「健全企業」が22・6%(同22・4%)、「欠損企業」が21・2%(同同率)。営業利益率は「健全企業」が1・5%(同1・2%)、「欠損企業」がマイナス3・3%(同マイナス3・7%)で平均マイナス0・3%(同0・4%)。経常利益率は平均0・6%(同0・3%)で「健全企業」が2・5%(同1・9%)と大きく改善したが、「欠損企業」はマイナス2・6%(同マイナス3・0%)。
業員1人当たりの売上高は平均で月間183万8000円(同186万2000円)、1坪当たりの在庫高は平均54万9000円(同51万3000円)と前年続いて増加。1坪当たり店売売上高は月間平均13万9000円(同14万3000円)。商品回転率は平均で4・9回転(同同)。商品回転率に粗利益率を掛けた商品投下資本粗利益率は103・0%(同110・3%)。
自己資本比率は「健全企業」が19・8(同19・2%)、「欠損企業」は8・9%(同9・4%)で平均15・7%(同15・4%)。平均初任給は高校卒が15万6352円(同15万5261円)、短大・専門学校卒が16万3326円(同16万7925円)、大卒が17万2246円(同18万3579円)。
アンケート調査は、「読者サービスの実施」「新書の販売状況」「書店経営に於ける先行き・見通し」について行った。
「読者サービス」では、最も多かったのが「ラッピング」で139企業が実施。次いで「ブックライナーの利用」が133企業、「無料配達」が122企業、「店内にBGMを流す」が112企業、e―hon加盟が96企業、ざっしの定期便の利用が95企業など。
「新書の販売状況」は売上が上がったと答えた書店が38・8%、前年並みが35・2%、下がったが26・0%。これに対して、売場の位置を変更した書店が26・9%、棚段数を増やした書店は40・4%にとどまっている。
「書店経営における先行き・見通し」は、「下降」との答えが65・8%、「不変」が26・6%、「上昇」は3・3%にとどまっている。資金調達方法で重要度が高いのは「民間金融機関」が35・8%、「内部資金」が25・1%、「公的機関」が18・1%。設備投資のスタンスは「サービスの質的向上」が25・6%、「省力化合理化」が22・2%、「ハード(棚等)の充実や売場の拡大」が17・5%。利益配分のスタンスは「従業員への還元」が25・9%、「有利子負債削減」が25・8%、「内部留保」が23・7%などの結果になった。
「書店経営の実態」トーハン・コンサルティング編、B5判、72p、頒価1470円。
日販「書店経営指標」
日販「書店経営指標」は、06年1月から12月までの期間、113企業580店舗(同117企業593店舗)の経営資料から集計。調査店の年商規模は、「1億円未満」が13・1%(同9・5%%)、「1億円―3億円」が15・0%(同19・0%)、「3億円―5億円」が15・0%(同12・7%)、「5億円―10億円」が17・1%(同25・0%)、「10億円以上」が39・8%(同40・0%)。
収益は経常利益率が3%以上の企業は18・3%(同16・3%)、3%未満1%以上は26・6%(同16・2%)、1%未満0%以上は36・8%(同44・2%)、0%未満が18・3%(同23・3%)。業態は出版物が80%以上の「専業」が55企業355店舗(同66企業361店舗)、80%未満の「複合」が58企業225店舗(同51企業232店舗)。
売上高前年比は98・89%(同99・09%)で10年連続のマイナス。出版物のみだと99・25%(同99・21%)、セルAVは92・81%(同96・97%)、レンタルは100・49(同100・05%)。
1坪当たりの店売売上高は1日5914円(同5951円)で前年より減少。商品回転率は書籍2・2回転(同同)、雑誌8・4回転(同8・2回転)、コミックス4・5回転(同同)で全体で3・4回転(同同)。1坪当たりの在庫高は出版物のみの本体価格で57万9000円(同58万8000円)で、過去5年で最も高かった前年を9000円下回った。客単価は平均1160円(同1169円)。
損益面では、粗利益率が「専業」で22・27%(同22・04%)、「複合」で26・51%(同27・87%)。営業利益率は平均で0・66%(同マイナス0・06%)と10年振りの黒字となった。経常利益率は平均で0・82%(同0・54%)と3年連続で増加。専業は0・69%(同0・36%)と増加し、複合も1・11%(同0・78%)と増加した。
従業員構成比は、正社員の比率が平均29・5%。専業は正社員比率が35・5%なのに対して、複合は17・4%と低い。男女比は平均で男性が39・4%。正規社員の賃金は、37・3歳(同36・6歳)平均で23万8177円(同23万115円)。賞与は2・07カ月(同2・39カ月)と減少した。
「書店経営指標」日販経営相談センター編、B5判、72p、頒価1575円。