【関西】書店未来研究会関西支部会が11月10日、大阪市内のホテル日航大阪で開かれ、第1部はゲストの講談社・野間省伸副社長に大垣守弘理事(大垣書店)がインタビュー、2部は5人の書店人と講談社販売部5人によるパネルディスカッションという趣向で、普段、聞くことのできない話しに出席者は真剣に耳を傾けた。
会員書店、取次、講談社ら総勢150人が出席。中島良太関西支部長(三和書房)は「100周年を迎える講談社の野間副社長に未来研関西のスーパースター大垣理事がインタビューという企画を考えた。2部のディスカッション、現場担当者の貴重な成功事例もぜひ商売のヒントにしてほしい。これからも面白くて、ためになる関西支部を目指したい」とあいさつ。
講談社・森武文常務は「カラー版新日本大歳時記」の予約獲得数の1位、2位が京都・萬年堂(横谷隆幸社長)、大阪・高坂書店(高坂喜一社長)と関西支部が占めたことに謝辞を述べた。
第1部の野間副社長インタビュー(別掲)に続き、第2部は旭屋書店営業部・硲千佳子さん、大垣書店高槻店・泉至彦さん、紀伊國屋書店本町店・百々典孝さん、ふたば書房・佐藤実希さん、水嶋書房くずはモール店・原聡美さんの5人と講談社販売部の5人が「商いのコツ、のぞいてみまへんか!?」をテーマに各店のポップ作り、陳列、オリジナル賞などパネルディスカッション形式で発表。
懇親会では田村定良副理事長(田村書店)が「今回の未来研は趣向を大きく変えたので役員一同ヒヤヒヤした。野間さんは控えめに話していたが、書店としては講談社が『これで行くぞ』と強烈な号令をかけてくれないと動けない。今後の出版界は野間さんのような若きリーダーの肩にかかっているので強く期待している。ディスカッションは素晴らしいパネリストのおかげで大成功だった。」と述べ乾杯した。
【大垣氏と野間氏によるセッション】
大垣 相次ぐ雑誌の休刊について。
野間 今年も5誌の休刊を発表し、書店には大変申し訳なく思う。販売収入と広告収入だけでは確かに厳しい。対策としては、例えば「ViVi」では誌上通販や雑誌名を使ったクレジットカードを発行、そのカードで買うと通販が安くなるという取り組み、読者イベントも積極的に催している。
大垣 ICタグについて。
野間 万引き対策からスタートしたが、物流や棚卸などの効率化につながるメリットもある。技術的にはクリアできているが、廃棄、コスト、各出版社の足並みといった問題が残っている。小学館の「ホームメディカ」の例も見ながら活用を進めていきたい。
大垣 講談社の今後の方向性。
野間 出版コンテンツの多メディア化と海外進出を重要視している。現在、テレビドラマや映画の大半で出版物が原作になっており、映像化によって本も売れる傾向がある。
小説「流星の絆」(東野圭吾著)もその例のひとつ。これまでは国内だけの多メディア化を考えていたが、これからは海外と交渉、契約する能力も必要になる。
大垣 映像重視ではなく紙の本が基本と考えていいのか。
野間 当社に映画が作れる人間がいるわけではなく、紙のコンテンツを作ることに強みを持っている。
大垣 私には息子が3人いる。書店を継がせていいのか不安に思う。出版界のトップ企業として夢のある話しを。
野間 日本の出版コンテンツは世界に通用するし、ムーブメントを起こせる。それによって海外で得た情報や才能をまた日本で出版することもできる。紙の市場はまだ発展できる。目の前は厳しいが、まだまだやっていないことが多い。それをやっていくので、注目、協力してもらいたい。
大垣 最近、取次の帳合変更が特に目立つが。
野間 個々の事情、個別の案件なので、私も細かくは理解していないが、一般論として言うと、業界のプラスになっているのか、また売り上げが伸びているのか疑問に思う。
大垣 出版社の倒産が多いが業界再編の可能性は
野間 10年前にアメリカの出版社の人が「今の日本の出版業界はアメリカの10年前を見ているようだ」と言っていた。その10年後アメリカは再編した。当社が積極的にアクションを起こすわけではないが、このままの状況が続けば再編の可能性は非常に高い。