主婦の友社、DNPと業務・資本提携 DNPが株39%を保有

2009年5月13日

 主婦の友社と大日本印刷(DNP)は5月8日、業務・資本提携に合意した。DNPが主婦の友社の株式を既存分も含めて総議決数の39%を保有し、筆頭株主となり、取締役、監査役(非常勤)各1人を派遣する。経営は主婦の友社の独自性を尊重し、従業員の雇用については変更はない。

 提携の狙いは、まず主婦の友社の財務体質の強化があげられる。付加価値の高いコンテンツ制作、返品率の改善、メディア選択によるコストの最小化、クロスメディアの展開を中心に多面的事業開発を図る。また、読者対象だけでなく「B・to・B」を志向した企業向けのコンテンツを視野に、販売機会の向上を目指す。

 12日に、主婦の友社内で記者会見を開催、神田高志会長は「環境悪化は出版業界に苦戦を強いている上に、雑誌主体の出版社は広告収入も厳しい。資本・業務提携でコスト削減、作業の効率化を図り、出来上がった商品の管理までを一貫させる。さらに、コンテンツの多様性を前面に、デジタル化へも挑戦したい。そのためには1社では限界もあるだろう。DNPのプラットホームを拝借して、多面的な事業展開、取引の拡大を目指す。提携により財務体質も強化され、次へのステップへの飛躍につながると確信する」と説明。

 荻野善之社長は「新たに35%をDNPに持って貰うことになった。業績、経営基盤が脆弱化した中、その経営基盤を強化するために業務と資本両面で提携する。これによって財務、収益面を強化、経営の安定を図るのが狙い」とし、業務提携について▽互いの返品率の改善▽メディア製作コストの最小化▽販売機会向上のための企業向けのコンテンツ開発―の3点を挙げた。

 今後の具体的展開としては、プロジェクトチームを組んで課題をあぶり出し、優先順位を決めるが、経営の自主性、独立性は主婦の友社に担保されており、経営主体は不変、出版印刷などの取引先も従前通り。

 記者会見では、話は昨年10月頃から持ち上がり、銀行等の仲介はないことも明かされた。また、今月中に株の移動が実現し、将来的にはDNPグループの丸善、ジュンク堂書店との連携強化の可能性も示唆した。

 主婦の友社の3月末の実績は、総売上高が171億円(前期195億円)、総合返品率は46%、従業員は171人。

 DNPの出版社との業務・資本提携は、早稲田経営出版、教育出版に続く3度目。流通分野では丸善、図書館流通センター、ジュンク堂との資本提携を終えており、出版・印刷・流通と出版ビジネスの枠をさらに拡大した。取得株39%は経営権を持てる数ではないが、大日本印刷広報部は「あくまでも黒子に徹する」としており、今後、出版社との資本提携を積極的に推進していく構えではないことを示した。