日本電子出版協会(JEPA)は6月11日、東京・千代田区の日本教育会館で6月度定例会を開催、「OCLC NetLibraryの現状、これからの展望」について、紀伊國屋書店ライブラリーサービス営業本部OCLCセンター・新元公寛センター長が、デモンストレーションを交えながら概要・実績などを説明し、出席した出版社に参加を呼びかけた。また、質疑応答の中で、凸版印刷との協業による具体的なモデルを7月に提示すると述べた。
NetLibraryは図書館向けに専門書籍などの電子コンテンツを提供するサービスで、02年から米国の図書館サービス提供・研究機関であるOCLCの1部門となっている。現在、欧米主要出版社500社が参加し、eBooks20万タイトル、eAudiobooks1万タイトルを、50カ国1万6000図書館(日本国内106図書館)に提供している。
紀伊國屋書店は日本におけるNetLibraryの代理店契約を結んでおり、新元センター長は、「学術・教養系図書が9割なので、メインターゲットとなる大学、研究所に紹介している」と同社の事業について説明した。
ビジネスモデルは、図書館をマーケットにしたBtoBで、出版社がタイトルを選定・価格を決定し、冊子書籍と同じ買切モデルで提供している。
出版社の経費は、コンテンツ制作費・著者へのロイヤリティで、収入は、個別契約に基づく販売実績に従ったロイヤリティが月次で支払われる。著作権管理は1タイトル1アクセスモデルを採用している。
これまでの実績は、和書は07年9月の提供開始以来20カ月間の累計で約1万冊を85機関に導入。累計売上高は9926万円とし、「図書館に必要なコンテンツなら確実に売れると実感している」と述べた。
今後の見込みとして、現状の24社約700タイトルの和書を09年度末までに1500タイトル、10年度末に3000?5000タイトルとし、国内ユーザー数を09年度末までに200機関、10年度末までに400機関に増やすという。
学術市場が電子化に傾いていることにふれ、成功のためのポイントとして▽コンテンツの拡充▽コレクションの充実▽紙媒体も含む学術出版全体の活性化▽出版社が参加しやすいモデルの提示―をあげた。
さらに出版社の導入メリットとして、▽判りやすいビジネスモデル▽「絶版」の概念が無くなる(出版社の事情での提供中止は可能)▽データのマルチユースの実現▽印刷会社との協力によるデータ制作の効率化としたうえで、「出版社・図書館・利用者による前向きな循環をつくって、出版文化を続けていくためのフレームとしてのNetLibraryへの参加を検討いただきたい」と呼びかけた。
質疑応答では、冊子本との関係について、図書館には研究などを充実させるツールとして、電子と紙を共存させることを提案していると解答した。
また凸版印刷との協業については、OCLCも加わって、出版社にとっての具体的なモデルを7月頃には提示できるとした。