朝日新聞社と沖縄タイムス社、日本新聞博物館(ニュースパーク)が主催する企画展「よみがえる沖縄1935」が3月31日、横浜市の同館で始まった。朝日新聞の記者が1935年に沖縄で撮影し、約80年を経て大阪本社で見つかった277コマのネガをもとに、AI(人工知能)技術と住民の記憶によってカラー化した写真など約100点を展示している。7月1日まで。 「よみがえる沖縄1935」は、大阪本社の倉庫からネガが見つかり、朝日新聞西部本社・井手雅春編集局長がそれぞれの写真の物語を報道したいと考え、沖タイに提案。同社もそれに協力し、100人以上の関係者に聞き込みや取材を行い、当時の撮影場所などを特定していった。それらの写真は両紙で連載され、大きな反響を呼んだ。また、写真集『沖縄1935』(朝日新聞出版)や朝日新聞デジタルでも特集ページを設けた。 さらに、AIを活用して1935年撮影の沖縄の白黒写真を、現実の風景に近づけていく取り組みを進めた。衣服や食べ物の色は、当時を知る人に取材し、補正した。 31日に開かれたオープニングセレモニーで、朝日・西村陽一常務取締役編集担当はこれまでの経緯などを紹介。「昔ならば『ネガを発見』という一報だけで終わっていたが、今回は沖タイと共同取材をして隠された物語と人物を探り当て、デジタルで展開、カラー化をほどこし、写真集を出し、今回の魅力的な写真展の開催につながった。1枚のネガから始まった大きな旅がいったん完結するが、この写真展でさらに多くの関心を呼ぶと確信している」と語った。 沖タイ・武富和彦常務取締役も「沖縄戦の写真は嫌というほど見てきたが、戦前の沖縄を写した写真はみんなほとんど見たことがなかった。戦争で破壊される前、沖縄に豊かな暮らし、文化があったことを、改めて277枚のネガが教えてくれた」と話し、紙面に掲載したときの大反響、写真集が沖縄の書店大賞をとったことなどを紹介した。 そのうえで、「写真展では、沖縄の古きよき時代を見るだけでなく、その写真の裏側にある歴史や文化を破壊し、人々から笑顔を奪い去る戦争のおろかさも感じてほしい。これらの写真が、今を考え、将来を見通す一助になれば」と語った。