ディスカバー・ジャパン、雑誌を通して地域振興ビジネスを展開

2019年6月28日

 昨年設立された㈱ディスカバー・ジャパンは、月刊誌『Discover Japan』の発行を中心に、地域振興ビジネスを展開。デジタル化でインバウンドへの対応なども強化しており、雑誌ブランドの多面展開例として注目される。

 

 『Discover Japan』は、地方文化など日本を再発見することをテーマに、食や旅行、美術・工芸、伝統文化などを紹介する。枻出版社が2008年に季刊(ムック)で刊行を開始、09年に雑誌コードを取得して隔月刊、14年には月刊化した。

 

 新会社が昨年12月から発行元となり、4月からは取次の取引口座を開設して発売元となった。枻出版社で同誌を立ち上げ、新会社で取締役編集長を務める髙橋俊宏氏=写真=は、新会社設立について「雑誌発行とともに自治体との連携やイベントなど、いろいろなビジネスを行う事業体のように動いていたので、発展的にスピンアウトした」と説明する。

 

髙橋取締役

 枻出版社は新会社に出資しており、取次の口座開設までは雑誌の発売元にもなっていた。髙橋編集長は大学卒業後、実業之日本社で3年間広告営業を担当した後、枻出版社に転じ、編集者としてアウトドア、ライフスタイルなどのムックや雑誌を担当。

 

 そして、岡山県出身の髙橋編集長が「住んでいた頃は当たり前だと思っていた瀬戸内の景色も、東京から見ると珍しいと感じた」と、地方の良さを発信する雑誌として企画したのが『Discover Japan』だ。

 

 創刊号の特集「名旅館25の秘密」では、メディアには滅多に出ない京都の老舗旅館「俵屋」を見取り図やアメニティーまで詳細に紹介するなど、クオリティーに徹底してこだわった。

 

 そして、04年の中越沖地震で出雲崎町周辺に浮上した縄文時代の古木を活用する誌上コンペを同号で実施したことが、地域振興ビジネスに発展した。

 

 その後も同地を定期的に訪問し、間伐材利用や現地産米のコンペを続け、東京からのバスツアーも企画。「最初は手弁当だったが、自治体の首長や中央官庁の人たちと接点ができ、県のPRなどの仕事が増えていった」という。

 

 いまはこうした自治体系の企画が収入の半分ほどに拡大。髙橋編集長は、雑誌作りを通して培ったノウハウやクリエイターとの関係を生かし、地方文化をスタイリッシュに表現するハブになれると考えている。

 

 特に、紙の雑誌が持つブランド力が大きいという。京都府の7市で展開した地域振興事業「海の京都観光圏」に関わり、『海の京都』(エイムック)を作成したが、地元で作った観光ルートをタレントでアーティストの井浦新氏が巡り、地元の人々と交流してフィードバックする活動をそのまま本にまとめた。

 

 「本にすることで広く知ってもらえるとともに、本作りの過程に地元の人々を巻き込み、皆さんがその成果として本を手にすることで、地域の人々の意識を盛り上げることにもつながった」と髙橋編集長は手応えを話す。既に次の企画として飛騨高山の本も作った。

 

 独立を機に力を入れようとしているのがデジタルだ。これまで以上に個々の読者とつながることや、インバウンドへの対応などを目指し、アプリケーションやウェブサイトを構築。これから本格的にビジネスを構築していく。

 

 従業員数は、編集・コンテンツプロデュース・販売などの部署合わせて21人。前社では広告にも力を入れてきた髙橋編集長は、「社員が胸を張って広告営業や販売ができる質の高いコンテンツを作り、クライアントと一緒に地域を盛り上げていきたい」と考えている。

 

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