2019年7月10日発行号で通巻1000巻を迎えた、誠文堂新光社刊・子ども向け科学雑誌『子供の科学』。編集方針「子供たちに本当の科学を伝える」を軸に、多岐にわたる科学分野の情報を読者にわかりやすく伝えている。
今年の10月号で創刊95年を迎える同誌・土舘建太郎編集長は、「創刊当時は中学生の読者が多かったようだが、少しずつ読者の年齢層が下に広がってきており、今は小学校高学年がメインの読者層になっている」と紹介する。
また編集方針にふれて、「読者が知らない最先端の科学情報を伝えることが重要」と強調し、「毎月の特集や科学ニュースの記事は、最先端の研究に携わっている研究者を取材してまとめており、扱う内容は小学校で習う範囲を超えている。習っていない、テストに出ないことでも、子どもたちの知りたいという欲はいつの時代も同じ。『教える』というよりは、『こんなにおもしろいことがあるんだ』と好奇心を刺激するようにつくっている」と話す。
その中でも大切なのが「本当の科学を伝えること」と話す土舘編集長。「絵や写真をたくさん使う、関心をひく見出しを立てるなど、読者が誌面を見て興味を持てるようにつくることも大切ですが、研究者が話してくれたことをそのままの熱量で、本気で伝える。科学の専門用語もよく出てくるが、子ども向けだからと言葉をやさしくしすぎると、本質が伝わらなくなる可能性があるのであえて使っている」と読者への向き合い方を示す。
同誌では、読者が手を動かしてものを作る経験も提供している。『子供の科学 19年8月号』には、とじ込み付録として「ペーパークラフトむかわ竜」がついている。はじめての読者のために簡単につくれるようにしながら、コアな読者も満足できるよう、より細部までつくりこめる難易度をつけた設計になっている。
このほかにも本誌と連動してプログラミングに取り組めるキットの販売を行い、子どもたちが半田ごてなどを使って電子工作を行うワークショップ「KoKaスクール」を月1回のペースで展開している。「プログラミングキットやワークショップの参加費はけっして安くないが、売れ行きは良い。中でも『micro:bit』というイギリスのBBCが開発した小型マイコンを使ったキットは、プログラミング学習に関心のある保護者にも好評」と紹介する。
また、7月20日から三菱みなとみらい技術館と共催で「企画展 ものづくりしようよ!」を神奈川県横浜市の同館で開催し、95年分の『子供の科学』の展示をはじめ、さまざまなワークショップも展開している。土舘編集長は「子どもたちが『ものづくりしてみたい!』と思ってくれたらうれしい。ワークショップなどを通して、夏休みにぜひ好きなものをつくってほしい」と来場を呼びかける。
今後の目標について、「科学を深掘りするこれまでの姿勢を大事にしながら、科学大好きという読者だけでなく、もっと多くの子どもたちに科学のおもしろさを知ってもらえるような誌面をつくっていきたい」と土舘編集長は力を込めた。