1974年に単行本が刊行され、筑摩書房が30年以上前に文庫化した『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』(阿部謹也/ちくま文庫)が、ツイッターの発信をきっかけに3度にわたり計2万9000部の重版がかかり累計発行部数は15万3000部に達している。
著者の阿部氏は中世史ブームの火付け役となったヨーロッパ中世史家。その阿部氏が執筆し、1972年11月刊行の『思想』(岩波書店)に掲載された論文が同書の原型となっており、74年に平凡社からハードカバー判が刊行されている。88年にちくま文庫として刊行し、今年の6月までに12万4000部を発行してきたロングセラー作品。
今年6月26日、同社のツイッターアカウントで同書執筆のきっかけとなった出来事であり「ハーメルンの笛吹き男」の伝承になった「ドイツ・ハーメルン子供集団失踪事件」が735年前の同日に起きたことであることをつぶやいたところ、6000を超える「いいね」がついた。
そのなかで、すでに同書を読んでいた読者のコメントにより、未読の読者にも同書の魅力が伝わり、ネット書店を中心に同書が品切れになるなど反響があった。
これを受けて、同社では2000部の重版を決定していたが、注文があふれたことから、数日後には倍の4000部に修正。この重版分が書店に着荷するとすぐに予想を上回る勢いで売れたため、1週間後にはさらに1万5000部の重版が決定した。
今回の重版を受けて同社は、同書を専門的な「歴史学の名著」としてだけではなく、読みものとしても純粋に面白いことを広く伝えるものにしたいとのことから、手書きの特製帯を巻いて出荷している。
同社営業担当は、「謎に迫る様はまるで推理小説。普段歴史書に馴染のない人も伏線を回収していくような快感を気軽に楽しんでもらいたい」と話している。
□文庫判/本体760円