帝国データバンクは企業概要ファイル「COSMOS2」(約147万社収録)から、2019年9月時点での出版社、出版取次および書店経営を主業とする企業4734社を「出版関連業者」と定義し、経営実態の調査を実施した。売上高合計、企業実態などを分析した調査レポートを9月26日に発表。業界全体として10年前の08年度比での売上高減少率は2ケタを超え、出版取次では25・1%の減となった。
18年度の出版社の売上高合計は1兆6036億4700万円となり2年連続の減少(前年度比0・2%減)、出版取次は1兆5195億3200万円(同4・3%減)、書店経営は1兆652億6000万円(同1・3%減)。
出版関連業者4734社のうち18年度の「売上規模」が判明した4724社では「1億円未満」が2438社(構成比51・6%)で最も多い。次いで「1~10億円未満」が1794社(同38・0%)となった。
都道府県別社数でみると、全業種で「東京都」がトップ。以下、「大阪府」や「北海道」「愛知県」など主要都市を有する都道府県に多いという分布となった。
出版取次の売上高5年連続で減収
08年と、13年度から18年度までの売上高が判明した出版関連業者3740社をみると、18年度は全業種で前年度比減少。このうち、出版社は1兆6036億4700万円(前年度比0・2%減)で2年連続の減少。出版取次は1兆5195億3200万円(同4・3%減)で、5年連続で減収となった。
書店経営は1兆652億6000万円(同1・3%減)となり、3年連続で減収となった。
書店主要社の18年度売上高として紀伊國屋書店1031億4400万円、丸善ジュンク堂書店743億9000万円、未来屋書店525億3100万円、トップカルチャー314億8200万円、文教堂242億3700万円をあげている。
全業種ともに小規模事業者が多く、特に書店経営業者は「1億円未満」の構成比が最も高く全体の57・4%を占めている。
東京に一極集中、2位大阪の8倍
出版関連業者を「都道府県別」にみると、全業種で「東京都」がトップとなり、全体でみると2位の「大阪府」の8倍以上と一際目立つ。
3業種それぞれにみても、「大阪府」や「北海道」「愛知県」など主要都市を有する都道府県に多いという分布となった。
北海道では今年5月以降、「喜久屋書店 BOOK JAM」の店舗名で書店経営をしていた(株)BOOK JAMK&S(千歳市)や戦後まもなく創業し、長い業歴を有した(株)なにわ書房(登記面=札幌市西区)など著名な書店が倒産。そのほかに、中小規模の書店の廃業や閉鎖が相次いでいる。
また、日本出版取次協会は今年3月、人手不足などの物流面の影響により中国・九州地方での雑誌・書籍の販売が発売日より1日遅れると発表。消費者の購買意識にどれほど影響しているか注目されている。
18年度の国内の出版関連業者の売上高合計は出版社、出版取次、書店経営業者すべての業種で減少していることが判明した。紙媒体が縮小傾向にある中、各業界の業績も厳しいものとなっている。
変革に注目集まる一方でリスクも指摘
劇的に業況が変化する業界環境にはないが、減収幅は縮小傾向。出版社ではデジタル分野の販促強化で雑誌の落ち込みをカバーした企業があった。出版取次では教科書の一部改定や道徳の授業の教科書化における学習商材の販売数の増加した企業、書店経営では店舗のスクラップアンドビルドを進め、店舗を書籍・雑誌以外の雑貨や文房具など多角的に店舗を展開した企業などが見られた。
しかし、今年6月28日には書店経営大手の文教堂グループホールディングスと100%子会社の文教堂が私的整理である事業再生ADRを申請。
一方で、入場料を取る書店、日本出版販売とトーハンの物流協業化による業務の効率化、アマゾンジャパンの直接取引の拡大など、業界それぞれの変革も注目されている。
レポートのまとめでは、紙からデジタル化への対応のみならず、新たなビジネスモデルを模索する動きがあると言及。しかし、本業以外のノウハウが未熟である業者においては、投資次第では倒産につながるリスクともなりかねないと指摘している。
レポートでは「出版関連業者」を「出版社」、「出版取次」、「書店経営」の3業態としている。
「出版社」については新聞社を除き、「書店経営」は店頭販売を行う書店のほかに、中古書店やネット販売も扱う業者を含む。
なお、出版科学研究所の発表では18年の紙の出版物の推定販売金額は1兆2921億円(前年比5・7%減)と14年連続のマイナス。特に雑誌は5930億円(同9・4%減)で21年連続の前年割れと厳しい状況が続いている。