渋谷書店万引対策共同プロジェクト、6カ月で記録した万引きは31件

2020年3月9日

 東京・渋谷区の主要書店で、顔認証による万引防止に取り組んでいる「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」事務局はこのほど、開始から6カ月を経過した「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」の状況を発表した。それによると、参加店舗で万引行為として記録された登録件数は、27人31件だった。今のところトラブルも報告されていない。

 

 この実験は、渋谷区の大盛堂書店(売場面積約78坪)、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店(同1100坪)、啓文堂書店渋谷店(同200坪)の3書店で、顔認証システムに接続したカメラで来店した対象者の顔画像と共同利用データに保存している顔画像を照合し、万引実施者の可能性がある者が来店した場合、実務担当者に来店をアラートで知らせるもの。

 

 開始から6カ月間の状況は、有識者、参加店関係者等で構成されたプロジェクトの検証委員会が2月13日に開催した会合で報告された。

 

 対象期間は2019年7月30日から今年2月11日まで。この間の累計で参加店舗で万引行為として記録された登録件数は27人31件、確保は5人だった。

 

 31件中29件は単独敢行で、残り2件は2人組の疑いがあった。また、このうち4件はすでに登録済みの人物が、かつて登録した当該店または他店に再来店したものだ。転売目的のコミック万引の常習者や複数万引の常習的手口もあったが、自己消費目的が多かったという。

 

他店での万引き敢行を阻止

 

 また、事務局によるとこの間トラブルはなく、プロジェクトのシステムは目論見通り稼働しているという。登録済みの対象者が、登録店舗以外の店舗に来店した事案では、万引きの敢行を抑止。複数の事業者間での情報共有が行われたことで、対処できたと評価している。

 

 一方、登録件数が予想より少なめであるとの指摘があり、原因として、万引きが巧妙に行われるなど、その確認の困難さがあげられている。

 

 登録済みの対象者が来店したことが確認されたにも関わらず、被害の防止が図れなかった事案が2件あり、この点について対応の在り方が検討され、来店した対象者が店内での不審な行動に移る前に抑止する声掛けなどに習熟する必要があることが確認された。

【星野渉】