出版各社が学校休校に対応 電子書籍や教育コンテンツ無償で提供

2020年3月10日

 新型コロナウイルス感染拡大に伴って小中学校が休校するなどの対策が続く中、出版社などが電子化した出版物や教育コンテンツなどを無償で提供する動きが広がっている。

 

 KADOKAWAは3月2日~4月5日の期間、児童書サイト「ヨメルバ」で児童書207タイトル無料公開をスタートした。

 

「ヨメルバ」で207点を無償公開

 

 対象書籍は「角川つばさ文庫」185点と「どっちが強い!?」シリーズや『日本の歴史』など「角川まんが学習シリーズ」22点。「ヨメルバ」は0歳から小中学生までを対象に絵本、キャラクター書籍など児童書情報を提供。最新刊の試し読みや書き下ろし小説の連載、絵本の読み聞かせ動画などのコンテンツも提供している。

 

 また、同グループで電子書店を運営するブックウォーカーも3月10日~4月5日までの期間、電子書籍ストア「BOOK☆WALKER」で直近5カ月間に発売されたKADOKAWA発行のコミック雑誌20誌計85冊を無料公開した。 

 

 主婦の友社は3月4~31日の期間、ネット書店のAmazonと楽天ブックスで販売している「子どもの留守番を応援する」「毎日のごはんづくりに役立つ」電子書籍約90点を各97円に値下げした。

 

主婦の友社が提供する電子書籍の一部

 

 「子どもの留守番を応援する」は「おりがみ」、「パズル」、「クイズ」、「図鑑」、「工作」など学び&遊び系から、小学生女子に人気の読みもの約50点。「毎日のごはんづくりに役立つ」は時短料理や少ない食材でつくる料理などレシピ集、定番ロングセラーレシピ集など約40点。

 

 文藝春秋は3月6~19日の2週間、小中学生向けに電子書籍33タイトルをAmazonのKindle無料本コーナーで無料配信している。電子書籍編集部では「小中学生のみなさん文藝春秋の本に触れてください。お休みの間にたくさんの本と出会っていただけるとうれしいです」とのコメントを発表。

 

文藝春秋が無償公開した電子書籍の一部

 

 また、電子書籍サイト「ブックパス」を運営するKDDIは3月9~28日の期間、読み放題プラン「ブックパス読み放題プラン(総合コース/マガジンコース)」の月額情報料を無料にした。既にブックパス読み放題プランに加入していても新規加入でも3月分の月額情報料を無料とする。利用期間中に新規加入した場合は終了後自動的に3月29日で退会処理される。

 

読み放題プラン無料提供を告知するサイト

 

 児童書などを刊行する銀の鈴社は3月9日~4月10日の期間、デジタルコンテンツビジネスを支援するアイプレスジャパンが運営する電子書籍サイト「コンテン堂」モール内の「銀の鈴社 電子ブックストア」で電子書籍コンテンツ約500点を無料配信している。閲覧は購入後31日間可。

 

「銀の鈴社 電子ブックストア」

 

 同社の西野大介取締役は「新型コロナ休校を受け、自宅でネットやゲーム、YouTubeなどに時間を費やす子どもたちが多いと思います。本が読みたくても図書館も休館となっている今こそ、出版社が読書体験の機会を作るべきだと考えました。この長くなってしまった春休みを、良書と出会える良い期間、心の杖になる言葉と出会う機会にしてもらえればうれしいことです」とコメントしている。

 

教育関連でも教材・動画など提供進む

 

 教育関連では新興出版社啓林館が3月6日から、同社の参考書・問題集を動画で解説するオンライン動画教材「スマートレクチャー」のほぼすべてのコンテンツ動画約1万本を無料公開した。期間は春休みが終わる4月10日まで。

 

「スマートレクチャー」特設サイト

 

 「スマートレクチャー」は中学校数学教科書別冊「MathNaviブック」動画コンテンツ、小学校算数自己評価テスト、中学校数学自己評価テスト、小学校教科書、中学校教科書紙面と連携したデジタルコンテンツ集などを提供している。

 

 アルクは3月7~31日の期間、英語学習コンテンツの無償提供を行っている。「[音声DL付]キクタン小学生」や「[音声DL付]はじめての英検Jr.」など小中高生向けの電子書籍14点は3月6~19日、AmazonのKindle無料本コーナーで無料配信。

 

 「キクタンiOSアプリ」は3月7~31日、「キクタンAndroidアプリ」は3月10~31日に無償提供。Webメディア「ENGLISH JOURNAL ONLINE『PREMIUM』エリア」を3月10~31日の期間、申込日から1カ月間無償で提供する。

 

 小学館学校法人創志学園クラーク記念国際高等学校と3月9日から、中学1年から高校入学までを対象とした「基礎力ステップアップコンテンツ(SUC)」の家庭学習に活用できるスマホ・タブレット教材を無償で開放した。期間は一斉休校の状況をみながら4月中旬頃までを予定している。

 

クラーク版DDSトップ

 

 「SUC」はクラーク記念国際高等学校で開発されたタブレットで学習する教材。漢字(小学1年生~高校卒業レベル、常用漢字1945字)・算数・数学・アルファベット練習・英語(単語)・英語(文法)で構成されている。

 

 学研ホールディングスのグループ会社・学研プラスは3月9日、小学生・中学生のためのコンテンツポータルサイト「学研キッズネット」で、家庭でできる実験や工作を紹介する夏休み期間限定コンテンツ「自由研究プロジェクト」を4月10日までの期間再公開した。

 

「学研キッズネット」のコンテンツ

 

 「学研キッズネット」は学研が運営する小学生・中学生のための無料のコンテンツポータルサイト。「自由研究プロジェクト」は「実験」や「工作」「調べ学習」など自宅で取り組める500以上のテーマを掲載。 

 

 かんき出版は3月9~31日の期間、学習参考書や英検・TOEIC®対策本など45点を全文ウェブ上で無料公開した。対象書籍は小中高生の日常学習「1冊でしっかりわかる」シリーズ17点、小学生の受験対策「謎解きドリル」シリーズ6点、小学生低学年日常学習「カピバラさんドリル」シリーズ7点、TOEICや共通テスト、小論文、物理など高校生向け日常学習、受験対策15点。

 

【星野渉】

 

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