新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言によって、書店もインショップや大型店舗の多くは休業するケースが多い。首都圏に多くの店舗を構える有隣堂(本社・横浜市)や三省堂書店(本社・千代田区)は対象地域の多くの店を休業。業界全体でも大きな影響になるとみられる。そんな中、時短営業を続ける書店も従業員の感染リスクや、公的補償の有無など懸念は多いが、多くの人が移動の自粛を強いられる中で、知のインフラとして出版物を届け続けることへの使命感を示す書店人もいる。
有隣堂は35店舗を休業
有隣堂は神奈川県や東京都内で運営する38店舗すべてが緊急事態宣言の対象地域にあり、このうち35店舗を休業とした。話題となった東京ミッドタウン日比谷のHIBIYA CENTRAL MARKETや、コレド室町テラスの誠品生活日本橋も入居する商業施設の休館で休業している。
営業している店舗は4月8日現在で伊勢佐木町本店、藤沢店、厚木店の3店舗のみ。これら店舗も11~19時を基本に店舗判断で時間短縮で営業している。
同社店舗の4月1~6日の売り上げは、営業時間短縮の影響もあり前年同期比95%前後で推移していたが、宣言後、効力発生前日7日は同139%と駆け込み需要がみられた。ただ、ほぼ1カ月間にわたって多くの店舗が休業せざるを得なくなれば、その影響は大きい。ちなみに2019年4月の月間売上高は約20億円だったという。
松信健太郎副社長は、こうした売り上げへの影響とともに、「休業補償に対する公的支援の有無や、生活慣習としてECへの消費者依存度がさらに高まること」に懸念を示している。
ふたば書房・洞本社長「『本』は生活必需品」と指摘
一方、京都を中心に店舗展開している「ふたば書房」は、書店、雑貨店合わせて27店舗のうち、宣言が発令された大阪府と兵庫県にある14店舗を休業しているほか、京都でも親子連れが多く集まる「絵本カフェめばえ」を休業している。
感染拡大に伴う売り上げへの影響は、発令前から多少出ていたが、発令後さらに来店者が減ったという。また、対象区域に入っていない京都でも、「駅前の店など、これまで全国からビジネスマン、観光客が来ていたが、新幹線が閑散としていて発令後の影響は甚大だ」(洞本昌哉社長)という。
書店の休業について洞本社長は、「自宅待機や自粛の影響もあり、『本』という心の拠り所は必要だ。『本』は生活必需品として扱ってもいいと考える」とし、出版業界には、「こういうときに国(政府など)からお墨付きをもらえる業界であるために、普段のロビー活動など不十分だったのではないか」とも指摘する。
また、出版社に対しては、「どうしてもネガティブな話が多いなか、営業している郊外型書店などで学習参考書や資格関連書籍などが好調だといった、本にまつわるポジティブな情報を新聞広告などいろいろな手法で消費者に発信してほしい」と要望している。
【星野渉、堀雅視】