新型コロナウイルス感染防止のための緊急事態宣言が発令されたことに伴い書店の休業が増えているが、大手取次の日本出版販売(日販)とトーハンによると、両社のグループ書店と取引先書店のうち800店以上が休業していることがわかった。また、書籍の発行延期や雑誌の合併号などによる発売中止も増えている。
4月14日時点で日販のグループ書店は緊急事態宣言下の7都府県で33店舗、それ以外の道府県で2店舗の計35店舗が休業しているほか、取引先書店は7都府県で359店舗、それ以外の地域で35店舗の計394店舗が休業。設定する休業期間はそれぞれ違うが、グループ書店と取引先で計429店舗が休業している。一方、トーハンはグループ書店の58店舗を含めた取引書店約400店舗が休業しているため、両社を合わせると800店以上が休業していることになる。
14日には東京都が「本屋」を休業要請の対象から除くと発表したことで、営業を再開する書店も一部でみられるものの、大型商業施設のテナントとして入居する多くの書店は休業を余儀なくされている。また、単独店でも感染拡大防止や従業員の安全確保の観点から休業を続ける大型書店もある。
出版物への需要は続く
一方、日販によると、4月1~10日の出版物販売状況は、取引先書店POS調査で雑誌が前年比12・6%減、書籍が同0・8%減、コミックが同19・8%増、開発商品が同10・7%減。休業店を除くと雑誌が同6・7%減、書籍が同10・5%増、コミックが同27・7%増、開発商品が同2・3%減と、営業している店舗での売れ行きは続いている。
ジャンルでは、緊急事態宣言に伴う休校措置の影響もあり学参・児童書の伸びが続き、コミックは 『ONE PIECE』、『PLUS SLAM DUNK ILLUSTRATIONS2』が牽引している。
書籍単品では4月7日に発表された「本屋大賞2020」受賞作の凪良ゆう『流浪の月』(東京創元社)や乃木坂46の秋元真夏写真集『しあわせにしたい』(竹書房)が大きく売り上げを伸ばしている。
書籍の発行延期や雑誌の発行中止も
しかし、出版社の刊行状況は、イベントや映画と関連した書籍や、観光関連の商品を中心に発売が先送りになっており、この現時点で日販の仕入部門で確認しているだけで約40点の変更があるという。
一方、雑誌は3~4月に中国での付録製作の遅延による発売延期が多かったのに対して、5月以降は緊急事態宣言により取材・編集ができないことや、取材対象のイベント中止などの影響が出ており、各出版社はホームページで月刊誌を合併号にしたり、発売を中止するなどの措置を告知しているが、日販によると4~7月にかけて計71誌が発売中止になるという。
【星野渉】