図書館流通センター(TRC)は4月20日、公共図書館などに提供している電子図書館サービスの3月貸出実績が前年比255%と大きく増加したと発表した。新型コロナウイルスの影響により2月中旬以降、臨時休館・業務縮小を行う公共図書館が相次ぎ、小中学校や高校の多くが休校となる中、自宅から利用できる電子図書館サービスの利用が増加していることがわかった。
TRCの電子図書館サービスは4月15日現在、全国76自治体276館の公共図書館と小中高校・大学図書館11館で導入されている。
貸出実績は2019年3月に約1万7700件だったのに対して、20年3月は約4万5100件と大幅に増加。20年2月との前月比でも220%増となった。導入館によっては対前年・前月比が400%前後に達しているところもあるという。
TRCの電子図書館事業は、11年1月に1号館として導入した堺市立図書館(大阪府)から公共図書館での導入が進み、国内の公共図書館では高いシェアを誇る。
16年には㈱日本電子図書館サービス(JDLS)と資本提携し、20年3月現在で約8万タイトルのコンテンツを提供。さらに18年にスイスのビブリオテカ社と提携し、同社の150万タイトルを超える洋書の電子書籍を提供している。
また、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、TRCは3月13日からJDLS及びKADOKAWA、インプレス、ヤック企画、Jリサーチ出版、母子保健事業団の出版5社の協力で、希望館(70自治体)に対して141点の読み放題コンテンツを無償提供。3月の2週間だけで約7000件の貸し出しがあったという。
電子図書館サービスを利用している学校からは、「本校も休校となり、Googleを使ってネットで授業を行うことになった。IDとパスワードを配布し、Google画面から電子図書館に入れるようにしたところ、急に利用が増えた。公共図書館も閉館し、書店も閉店しているので、本を読みたい生徒は電子図書館だけが頼り」といった声が寄せられている。
また、堺市立中央図書館は「新たに始めた図書館公式Twitterで電子書籍の紹介に加え、臨時利用者ID発行を広報したところ、多くの申し込みをいただいた」とSNS活用の事例を紹介。
奈良県大和高田市立図書館も「市立の小中学校が休校となった今年3月以降、電子図書館の利用がこれまでの1・5倍になった。レシピ本や整理整頓の方法などが書かれた本に人気がある。問い合わせの多さに潜在的なニーズを強く感じる」とコメントするなど、新型コロナウイルスの影響で電子図書館サービスの需要が高まっている。