ネット購入で休業書店を支援 ポプラ社が「e-hon」加盟店向けに施策開始

2020年4月24日

施策を告知するポプラ社のサイト

 

 ポプラ社は緊急事態宣言下で休業に追い込まれている書店への支援策として、4月22日からトーハンのECサービス「e-hon」の加盟書店を対象に、ネットで販売した同社商品の売り上げの20%を還元する取り組みをスタートした。他の出版社にも参加を呼びかけ、ECサイトを運営する書店にも同様の提案をしており、業界全体に広げることを目指している。

 

 「e-hon」は利用者が商品を購入する場合、加盟書店から選んだ「My書店」での受け取りを利用すると送料・手数料無料で受け取れるサービス。現在、全国の約3000書店が「My書店」として加盟している。

 

 ポプラ社の支援策は、4月1日から緊急事態宣言の期間とされる5月6日までに「e-hon」で購入された同社商品の売り上げに対して、登録された「My書店」に本体価格の20%を報奨金として還元するもの。宣言期間が延長された場合は施策の実施期間も延ばす。

 

 加盟店が店舗を休業していても、「My書店」に登録されていれば「e-hon」での販売で利益を得られる。これをリアル書店支援のスキームとして一般にアピールすることで、社会全体に書店支援の動きを広めるきっかけにする狙いがある。

 

千葉社長「書店と読者との繋がりを強くしたい」

 

ポプラ社・千葉社長

 この試みについて同社・千葉均社長は「近所の書店や行きつけの書店が閉店していても、ネットで本を購入すればその書店を応援できると知ってもらえれば、人々に書店とのつながりをもっと意識してもらえる。今後、感染が収束したとしても単に以前の状態に戻るのではなく、著者、出版社、書店、読者のつながりを以前より強くしたい。そのきっかけにできれば」と目的を述べる。

 

 そのために「自宅待機中の書店員さんなどには、このことをSNSなどで紹介してもらいたい」と考えている。

 

 今回、ネット販売を行っている書店を対象にする理由については、「休業した書店がそのまま廃業するのではないか」という懸念を持つことから、早急に具体的な施策を実現するためだと説明。同時に一般的な書店の利益改善にも積極的に取り組むという。

 

 同社は昨年から書店が返品しなければ高い利益率を提供する「低返品高粗利」モデルを日本出版販売とトーハンのグループ書店で実験的に開始。想定以上の成果が上がっており、今後も継続する予定だ。

 

 今回の支援スキームも「書店が自主仕入によって利益を確保しながら魅力を増し、読者とのつながりを強くする」(千葉社長)ことを実現させる手段だとも考えている。

 

 また、この施策は社内の若手から持ち上がった。その一人で児童書の編集を担当する岡本大氏は「本を届けたいのに店を閉めなければならない書店と、本を探しに行きたいのに行けない人がいることがもどかしく、社内でアイデアを募ったところ、いろいろな部署の人から提案があった」と述べる。

 

 スキーム作りに関わった児童書編集者の小林夏子氏は、「開けられないリアル書店の思いを、買いに行けない読者に繋げようというのが施策のスタートだった」と話す。

 

 同社が同様の提案をしているECサイトを運営する大手書店も、反応は極めて前向きだという。今後、さらに同様の支援スキームに参加する書店は増えそうだ。

 

【星野渉】

 

【ポプラ社の低返品・高利幅、千葉社長「選ばれる出版社になる」】