日本雑誌協会(雑協)と日本出版取次協会は4月28日、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、雑誌返品期限の延長施策を発表した。対象となるのは、2020年2~5月に発売された雑誌コード0~3から始まる雑誌および4月8日以降に返品期限を迎えた雑誌で、出版社が申請を行ったもの。発売日から数えて週刊誌は90日後、月刊誌は120日後、隔月刊誌は120日後、季刊誌は150日後まで返品期限を延長する。
雑協によると、4月28日までに雑協加盟の出版社64社から3183点、非加盟の出版社246社から2369点(27日時点)の申請があった。申請を行った出版社は合計310社、延長対象となった雑誌点数の合計は5552点に達した。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、全国の書店で休業が相次ぎ、既に発売された雑誌について返品作業を行えず、営業再開の段階で返品期限切れになる商品が多く発生することが予想されている。また、休業期間中に発売日を迎えた商品についても平時に比べ、販売期間が短く、売上の減少が見込まれていた。
そのような状況を踏まえ、雑協は日本出版取次協会の協力を得て、書店店頭における販売機会の創出と返品リスクの回避、期限切れ商品発生時の返品業務等の軽減を図る取り組みとして、返品期限の延長施策を実施すると決めた。
豊栖副委員長「返品作業の無駄を最小化」
雑協・販売委員会の豊栖雅文副委員長(小学館)は4月22日の記者会見で、「一番の狙いは新型コロナウイルスの収束後、必ず起こる返品作業の無駄を最小化することにある。また、休業中の書店は、返品作業を行うことができず、返品期限切れになってしまうのではないかと不安を抱えている。そうした書店に対して、安心感を与えるメッセージになってほしい」と述べた。このほかにも、雑誌の返品期限が延長されることで、返品数の削減を見込んでいる。
新型コロナ 雑誌編集の現場にも大きな影響
さらに豊栖副委員長は「2月は雑誌付録の問題で発売日などに影響が出た。今は各雑誌で取材が難しい状況となっている。雑誌モデルを派遣してもらえなかったり、撮影スタジオが3密となってしまって使用できないなど、雑誌編集の現場が混乱している。それに伴って週刊紙や月刊誌では合併号が多発することになる」と今後の見通しを述べた。
そのうえで「合併号で5~6月の発売点数が減ると、雑誌の売場が空いてしまうこともありえる。そこでバックナンバーとして、雑誌を長く売場においてもらえれば購入につながる。出版社側としても、在庫のある商品を注文してもらいたいが、そこでネックになるのが返品期限だった。今回の施策で返品期限が延長され、出版社の受注活動も行いやすくなる。業界全体の利益となる前向きな施策だ」と強調した。
【鷲尾昴】