楽天が運営するオンライン書店「楽天ブックス」は5月18日、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により在宅ワークが広がった2020年2月1日から4月20日までの期間に販売した「本ジャンル」のデータをもとに、「本ジャンル 部門別売上ランキング」と売上傾向を発表した。
ランキングでは、「語学・学習参考書部門」が20年2月の7位から、順位を上げ続けていき、4月には1位となった。同部門の売り上げは20年4月が前年同月比5.8倍と大きく伸長。在宅時間の増加を背景に「語学・学習参考書部門」や「絵本・児童書・図鑑部門」といったジャンルが売り上げを伸ばした。
【鷲尾昴】
売れ筋ジャンルに変化、自宅学習の需要高まる
「語学・学習参考書部門」の動きを前年と比較してみると、19年2月から4月の「本ジャンル 部門別売上ランキング」においては5位から順位変動がなかった。しかし、今年は新型コロナウイルスの影響が出始めた2月に7位となり、3月に5位と徐々に順位を上げ、4月には「人文・思想・社会部門」と「美容・暮らし・健康・料理部門」を追い抜き1位となった。
同部門内の「学習参考書・問題集部門」の売上推移を見てみると、20年4月に前年同月比5.8倍と大きく伸長。特に小学生向けの学習ドリルを含む「小学校部門」が好調で、前年同月比9.7倍と売り上げをけん引している。
また、19年2月から4月において3位だった「絵本・児童書・図鑑部門」は、20年2月で前年と同様の3位にランクイン。その後、3月には「人文・思想・社会部門」と「美容・暮らし・健康・料理部門」を抜かして1位となった。4月は「学習参考書・問題集部門」に1位を譲る形で2位に順位を落とした。
「学習参考書・問題集部門」と「絵本・児童書・図鑑部門」が大きく伸びた要因として、新型コロナウイルスの感染拡大による在宅時間の増加で、自宅学習の需要が高まったほか、家族と過ごす時間が増えたこと等があげられる。
全国的な臨時休校で特需、小学校部門は9.7倍に
その中でも、特に大きく影響したと思われるのが全国的な学校の臨時休校措置だ。政府は2月27日、国公私立を問わず全国の小中学校、高等学校、特別支援学校に対して一斉臨時休校を要請する方針を示した。要請に法的拘束力はないが、全国の学校で臨時休校措置が行われた。
文部科学省がホームページで公開した調査結果によると、3月16日時点までに臨時休校を実施した学校の割合は公立学校で98.9%、国立学校で100%、私立学校で97.8%に上った。
臨時休校による小学生の巣ごもり需要は売上傾向に強く影響している。「学習参考書・問題集部門」において4月に最も売上を伸ばしたのは、前年同月比9.7倍を記録した小学校部門だった。次いで高校・大学受験部門、中学校部門、幼稚園ドリル部門と続いている。
小学生向けの学習ドリル、ランキングの半数占める
売れ筋のタイトルを見ると、「語学・学習参考書部門ランキング」において例年はTOEICの問題集等が上位を占めていた。しかし、20年4月の売上トップ10のうち、8冊でキャラクターを用いた小学生向けの学習ドリルがランクインした。特に人気だったのが、主婦と生活社の「すみっコぐらし学習ドリル」シリーズで小学校低学年向けのタイトルが人気を集めた。そのほか、文響社の『日本一楽しい総復習ドリル うんこ総復習ドリル 小学1年生』などがランクインした。
19年4月の「語学・学習参考書部門ランキング」では英語学習本・試験対策本が7冊ランクインしているのに対し、小学生向け学習ドリルはゼロ冊だった。前年と比較してみると、20年4月のランキングは小学校低学年への教育ニーズを強く印象づける内容となった。
今回の結果は教育需要の高まりだけでない。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、「TOEIC(R)Program」を実施する国際ビジネスコミュニケーション協会は3月から5月の公開テストを全て中止するなど、英語検定試験の開催が見通せない状況にあることも要因の1つだ。
同協会は会場確保が困難等の理由から、6月28日に実施を予定していた「TOEIC Listening & Reading」公開テストについても中止を発表しており、同ランキングは新型コロナウイルスの影響を多面的に反映する形となった。
なお、4月に楽天ブックスに投稿された「語学・学習参考書部門」の商品レビューには、「小学校に入学してすぐに休校になった娘に、自学用に買いました」「入学式が延びたので、学校ごっこをしながらやっています」「休校対策として購入しました」など、家庭内教育で学習習慣を身につけてもらいたいとの家族の想いが多く寄せられた。
在宅時間の増加で、アナログゲームが人気に
巣ごもり需要によって書籍以外でも変化が起きている。楽天ブックスの「ゲームジャンル総合 週間ランキング」は、例年テレビゲーム関連商品のみが上位を占める傾向となっていたが、今年はトップ20に子ども向けおもちゃや、カードゲーム、ボードゲームなどのアナログゲームの計4商品がランクインした。
「おもちゃ部門 売上推移」を見ると、20年4月1日から4月20日の前年同月比は4.3倍となり、その中でもボードゲームなどを含むファミリー向け商品の売り上げは前年同月比9.6倍と大きく伸長している。
「おもちゃ部門 ランキング」においてはトップ10のうち、ファミリー向けの7商品がランクインする結果となり、家族で楽しめるカードゲームやボードゲームが人気を博している。ランキング1位の『おばけキャッチ』、4位の『ドブル』、6位の『ナインタイル』、9位の『はぁって言うゲーム』はいずれも、2~3人でカードやコマを使うアナログゲーム。
商品のレビューには、「外出自粛生活の楽しみにと購入しました。子どもとやってみましたが、めちゃくちゃ面白いです」「外出自粛中の神アイテム!盛り上がります」といった声が寄せられた。
多くの企業がテレワークを推奨し、在宅で過ごす時間が増える中、アナログゲームを通じて家族とのコミュニケーションを楽しみたい人が増えている。