科学ジャーナリスト賞に中日、毎日、読売東京 優れた科学報道を評価

2020年6月15日

 日本科学技術ジャーナリスト会議は6月9日、優れた科学報道を対象とした今年の科学ジャーナリスト賞に中日新聞、毎日新聞、読売新聞東京本社の3件を選んだと発表した。

 

 中日新聞編集局社会部の小沢慧一記者の新聞連載「南海トラフ80%の内幕(2019年10月20日~12月1日、7回連載)は、南海トラフ地震の発生確率をめぐって地震調査委員会の内部に存在した専門家の意見の不一致を、丹念な取材を通して明らかにした。

 

 専門家の間で統一的な科学的見解を見出すことの困難さや、科学的根拠の薄い数字が予算獲得などのために独り歩きする実態、科学と行政の役割分担など「地震対策に限らず、今に通ずる課題を浮き彫りにした」ことが高く評価された。

 

『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』

 

 毎日新聞「幻の科学技術立国」取材班(代表・須田桃子氏)の書籍『誰が科学を殺すのか 科学技術立国「崩壊」の衝撃』(毎日新聞出版)は、日本の科学技術の危うさを科学者や企業経営者など幅広く取材し、詳細なインタビューをまじえながら問題提起した。

 

 「短期的に成果や社会的利得につながる研究開発を偏重する政策に対する批判的な視点は決して新しいものではないが、危機的状況が深まる中、改めて注目されるべき課題に迫った好著と言える」とした。

 

『ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から』

 

 読売新聞東京本社編集局科学部次長の三井誠氏の書籍『ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から』(光文社新書)は、トランプ政権下のアメリカ社会における科学の姿を、実際に現場を歩いて描き出したルポルタージュとして高く評価された。

 

 「科学技術が生活の隅々にまで浸透し依存する現代社会において、科学・技術とどう向き合い、付き合っていくのかは、アメリカ社会だけの特別な話ではなく、日本の私たちにとっても無関心ではいられない課題」と評価した。