【書店セルフレジ特集】三洋堂ホールディングスの事例とシステム会社のサービス

2020年7月6日

 小売業で導入が進んでいるセルフレジは、書店業界でも一部のチェーン店で導入が本格化している。新型コロナウイルスの感染拡大による非接触決済への関心も高まり、今後さらに加速するだろう。本特集では、すでに50店舗以上、セルフレジを導入している三洋堂ホールディングスの取り組みと、システムを提供している各企業のシステムやサービスを紹介する。

 


 

三洋堂ホールディングス 前期末で46店舗に148台を導入

セルフレジで人件費や採用負担減らす

 

自社開発した統合型セルフレジ

 

 東海地域を中心に三洋堂書店76店舗を展開する三洋堂ホールディングスは、2018年から店舗へのセルフレジ導入を開始。今期中にはほぼ全店に導入する。導入後に大きなトラブルは発生せず、万引きなどによるロス率も変わらないといい、人件費の削減などに効果を発揮しているという。

 

今期中にほぼ全店で導入

 

 同社のセルフレジ導入は、まず2018 年2月に中野橋店(名古屋市)でレンタル専用セルフレジ2台を稼働。翌2019年3月までにレンタル専用を14店舗30台、レンタルと物販も扱うことができる統合型セルフレジを5店舗48台導入。

 

 その後は統合型セルフレジの導入を進め、2020年3月末で46店舗148台(うちレンタル専用は6店舗12台)に達し、今期も6月17日の豊川店での稼働で51店舗目となり、期中にほぼ全店での稼働を計画する。

 

フルセルフの統合型レジを開発

 

 「最低賃金が上昇するなど人件費が高騰し、人を集めるのも難しくなっている。セルフレジによって運営を安定させると同時に生産性向上を図ることが目的だった。既に、お客様はスーパーなどでセルフレジに慣れており、本の販売はもともとセルフの要素が強いので開発に踏み切った」と三洋堂ホールディングス取締役副社長・亀割卓氏は話す。

 

 このため、同社が導入しているセルフレジは、商品のスキャニングから決済まで、すべてを顧客が操作することでカウンターの人員を減らすことが可能な「フルセルフ型」。

 

 CD・DVDの防犯ケースを外したり、店頭にダミーを陳列しているゲーム類の販売、中古本の買取などは有人カウンターで対応するが、そのほかのレンタル・物販はすべて統合型セルフレジで決済が可能だ。

 

 決済手段は現金のほかクレジットカード、バーコード決済(PayPay、LINE P ay、au PAY、d払い)、ポンタポイントに対応。また、同社では今年4カ月からレジ袋の有料化を実施しているため、セルフレジとともに、顧客が有料袋やブックカバーを利用できる作業用カウンターも設置した。

 

袋やカバーを用意したセルフカウンター

 

自社開発で迅速に対応

 

 もともとP O Sシステムなどを自社開発してきた同社だが、2 017年初夏にセルフレジの開発に着手し、まずレンタル専用レジを8カ月ほどで完成。統合型セルフレジも2 018 年6月に開発に着手して、同年12月には導入を開始するというスピード開発だった。

 

 当時システム開発を担当した西脇正司取締役は「お客様が操作するため機能をなるべく簡素化した。操作を誘導する画面の開発などが必要だったが、既存POSレジのプラットフォームをもとに開発したので早く作ることができた」と述べる。

 

コロナ下で力を発揮

 

閑静な住宅街に立地する三洋堂書店よもぎ店

 

 店舗への導入に当たっては、カウンターの有人レジを1~2台にし、セルフレジを客数に応じて3~6台導入している。お客が操作するセルフレジは、店員が操作する有人レジに比べて会計にかかる時間が長くなるため台数は増やすが、カウンターの人員は減らし売場作業を兼任している。これにより1店舗あたり月間15 0人時ほどが削減されているという。

 

 昨年秋に導入したよもぎ店(名古屋市、売場3 8 8 坪)では、書籍・雑誌中心の1階は有人レジを3台から2台(1台は中古本買取り用)に減らし、セルフレジ3台を導入。レンタルとコミックスの2階は有人レジ3台から、有人レジ1台とセルフレジ3台にして、いずれも2人いたカウンター要員を1人にした。

 

1階カウンターは有人2台、セルフ3台に

 

 「担当者がカウンターに居続ける必要がないのでいろいろな作業ができる」という近藤隆視店長は、特にコロナ下で来店客が増加した時期「対人でなかったので助かった。セルフレジがなかったら大変だった」と話す。

 

アテンダーの配置が利用率向上のカギ

 

 導入店舗では稼働の2週間ほど前から店舗内にポスターを掲示してセルフレジ利用を促し、有人カウンターとの使い分けの告知を開始。導入時から1カ月間ぐらいは顧客への説明員(アテンダー)1人を配置している。

 

 このアテンダーの配置が「その後の利用率の高さを決めることになる」と、望月康生店舗運営部長はその重要性を指摘する。

 

 また、導入前には店長など時間帯責任者は2時間、そのほかの従業員は1時間かけて、顧客への説明の仕方や精算方法、トラブル対応などの研修を実施している。

 

セルフレジ利用は70%超に

 

 セルフレジの利用率は70%ほどに達しており、「想定よりも10%多い」(亀割副社長)。

 

 よもぎ店では今年5月の月間客数2万8600人のうち71%に当たる2万500人がセルフレジを利用した。今年6月初めに稼働した碧南店(碧南市)ではスタート当初から利用率が80%に達するなど顧客の認知も進んでいる。

 

 一方、顧客からの問い合わせなどは、利用できない商材についてと、対応していない支払い方法について程度で、導入に伴って「大きなトラブルは発生していない」(望月部長)という。

 

 また、無人決済で懸念される商品の「ロス」については、「セルフレジを導入して1年以上経過した店もあるが、影響は確認されていない」(亀割副社長)。

 

 レジ操作の手元が写るよう防犯カメラを調整したり、撮影中であることを告知するPOPを掲示するなどロスの増加を懸念していたが、いまのところセルフレジ導入とロス率の動きに関係性は見られないという。

 

 望月部長は人件費削減以外の効果として「通常カウンターに立つまでに20時間ほどの訓練が必要だが、カウンターに必要な人数が減ることで、トレーニング負担が軽くなり、店舗運営が安定するようになった」と話している。

 

左から亀割、西脇、望月、近藤の各氏

 


 

光和コンピューター KPOSシステムにセルフ機能が追加
オールインワンのカスタム仕様であらゆる店舗に対応

 出版社や書店など、出版業界向けのシステムを開発している光和コンピューターは、7月にセルフPOSシステムをリリースする。POSハードウェアはメーカーを選ばず対応可能だ。

 

わかりやすく使いやすいUI

 

 同社取締役流通ソリューション事業担当の多田元晴氏は開発の経緯について、「昨年9月ごろ、弊社のP O Sシステム『KPOS』を導入しているくまざわ書店から、三洋堂書店で取り扱っているセルフPOSを試験導入したい、との相談を受け、諸条件を打ち合わせた。結果、新たに他社のシステムを載せて既存システムと連携構築するより、現在稼働しているKPOSにセルフPOS機能を追加する方が、低コストで構築できることがわかり、それをきっかけに弊社でのセルフPOSシステムの追加開発が始まった」と話す。

 

筐体サンプル

 

 開発にあたっては、先行稼働していた三洋堂書店のセルフPOSシステムの仕様、運用方法を参考とし、書店独特の慣習も組み入れながら設計。開発後もUIやエラー処理に関する評価、意見をもらって、システムに反映させているという。

 

 また、当初は書店員が顧客との接点を維持するため、セミセルフでの利用をメインに開発していたが、その間の新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、商品登録から決済まで顧客だけで完結する、フルセルフの要素を追加して開発した。

 

KPOSセルフシステムの特徴

 

●インターネットを利用したシステム(店舗でのネット契約が必要)
●商品名称や価格等マスタ情報を、レジ開局時にサーバーから取得
●店舗内のどこのレジからでも、店単位のレジ点検が可能
●書籍二段コード/雑誌JAN(アドオン)コード/13桁及び8桁JANコードに対応
●ブックカバーや書籍名表示など、各書店に対応した特殊機能
●会員管理システム・ポイントカードの利用も可能(ハウスカード、共通ポイントカード)
●各種決済システム、決済手段に対応可能(現金、PAY決済、クレジット、電子マネー)
●売り上げ登録から決済完了までを購入者自身(非対面)で操作可能なPOSシステム

 

株式会社 光和コンピューター
〒101-0032 東京都千代田区岩本町3-1-2 岩本町東洋ビル5 階
電話番号:03-3865-1981
メールアドレス:kowa@kowa-com.co.jp

 


メトロコンピュータサービスが提案するセルフレジ
2020 年秋にリリース予定

 

 長年にわたり書店システムの開発・販売を手掛ける株式会社メトロコンピュータサービス(本社・長崎市)は、2020年秋にセルフレジのリリースを予定している。商品の登録から決済まですべてを顧客が行う「フルセルフ」型のレジで、AIを活用した客層診断や防犯機能も搭載予定だ。

 

レジ画像のサムネイル

METROセルフレジ本体(東芝TEC SS950Uシリーズ)、METROセルフレジ自動釣銭機(東芝TEC VITESE VT-330)

 

 同社は川崎興産メトロ書店の電算機部門が独立して創業したシステム会社。出自が書店ということもあり、書店業界でいち早く在庫管理を実現するなど書店トータルシステムを提供するとともに、コールセンターを併設して365日、書店からの問い合わせにも対応している。

 

 書店業務は、人手が必要な工程が多い職種であるが、経費削減のため、少ないスタッフでも店舗運営を可能にするシステム化が必要となる。同社としてはその一環として他の小売業界でもスタンダードになりつつある「セルフレジ」の導入を提案する。

 

 対象商品は書籍・雑誌等の出版物と、PLU(商品価格登録情報)を活用することで文具・雑貨等の複合商材にも対応可能。決済手段は現金のほか、クレジットカード、電子マネー、交通系ICカード、QR決済などに順次対応。共通ポイントカードも利用できるようにする。

 

 機器はレジ本体に、自動釣銭機と決済端末を接続する構成とし、登録から決済までを顧客が行えるようにする。本体内蔵の非接触式ハンズフリースキャナで商品のスキャンを簡単にし、さらには、オブションでタッチ式スキャナも用意。これら機器をスリムに収納できる「レジ収納台」の斡旋も可能だ。

 

 また、AIシステムをセルレジと連携することで、客層の自動診断(性別・年齢)や、万引きの再犯防止のための盗犯検知などの機能を搭載予定。客層の把握や、書籍・雑誌のロス削減が可能になる。

 

株式会社 メトロコンピュータサービス
〒850-0862 長崎市出島町5 番2 号
電話番号:095-828-1145
メールアドレス: mcs@metrobooks.co.jp

 


 

Bunkensha2020-6のサムネイル

文献社のセルフレジ