第8回「大阪ほんま本大賞」に蓮見恭子『たこ焼きの岸本』(ハルキ文庫)が選ばれ、大阪府を中心に関西近郊の書店約1000店で来年1月末まで5万部を目標に店頭展開をスタートさせた。
同賞は「地方からのベストセラー創出」「社会貢献」を目的に、関西の書店、販売会社ら有志で結成したOsakaBookOneProject(OBOP)が、大阪に所縁のある著者、または大阪に関する内容の小説を条件に「大阪の本屋と問屋が選んだ、ほんまに読んでほしい本」を決める。また、売上の一部で子どもたちに本を寄贈しており、過去7回で約20万冊(680万円分)を贈っている。
本作は、大阪の住吉大社近くで、亡き夫から引き継いだ「たこ焼き屋」を一人で営む主人公・岸本十喜子。十八歳で家を出た息子は行方知れず。しかし、玉子サンドと珈琲が美味しい喫茶店のママなど商店街の仲間と身の回りで起きる事件を解決していく。懐かしくもあり、笑える下町人情物語の文庫書き下ろし作品。
角川春樹事務所から蓮見氏に「できればたこ焼きを登場させて大阪の食をテーマに書いてほしい」と提案され、住吉大社近くに住む蓮見氏の友人にヒントをもらい創作したという。
蓮見氏は、文化通信社の取材に「老後問題を深刻にならないよう食べ物にからめ、大阪らしくコミカルに『大阪人が言いそうな事やわ』など、笑ったり、しんみりしたりもするが、読後感は悪くない本にしたかった」と話す。
受賞については「まさか自分が選ばれるとはと驚いている。宣伝してくれた角川春樹事務所と、選んでいただいた書店員の皆さんに感謝の気持ちでいっぱい」と喜び、OBOPについて「大人が選んだものでなく、子どもたちが読みたい本を贈るという素晴らしい取り組み。自分の作品が役立てることは非常に光栄なこと」と語っていた。現在、同書の2作目を執筆中で、その後も大阪が舞台の物語を書く予定だという。
例年実施している授賞式や爆売祈願会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響も考慮して行わないが、作品の舞台となった住吉大社近くのたこ焼き屋「やなぎ」とコラボレーションし、本書持参で「たこ焼き100円引き」のキャンペーンを実施する。
【堀雅視】