世界思想社教学社(京都市・上原寿明社長)はこのほど、庭や住まいに対する新しい見方を解き明かす『京都発・庭の歴史』(今江秀史)を発刊した。
本書は、平安時代から千年以上続く庭の歴史など変遷を整理し、庭の使われ方や各時代の人々が庭に求めた意味をひも解き、現代の庭仕事の実情につなげながら庭本来の意味を浮き彫りにしている。
様式やデザイン、作庭家など「庭園」に関する本は数多く刊行されてきたが、庭は鑑賞物ではなく「使うためのもの」との視点から、平安貴族の庭を小学校の敷地になぞらえて解説するなど、身近な事象と重ね合わせて理解を助ける。
芸術学や考古学、人文地理学など間接的に庭と関わる分野の人にも興味深い内容に仕上がった。著者の今江氏は京都市文化財保護課と二条城の職務を兼任する一方、現象学をもとに庭の学術研究を行う在野の研究者で、現場ならではの視点が目をひく。
同社編集部の高橋克典さんは、「コロナ禍で観光に行きにくい今だからこそ、庭本来の見方や歴史を学ぶきっかけになれば幸い。書店店頭では建築関連や京都本コーナーでの展開をお勧めしたい。刊行早々、新聞各社から著者取材の申し込みが続いている」と反響を語る。
□四六判並製/232㌻/本体2400円
【櫻井俊宏】