新星出版社 新シリーズでビジネス書市場に本格参入、『地政学』編が4刷5万部と好調

2020年8月11日

丸善丸の内本店1階

 

 新星出版社が6月15日に刊行した、新シリーズ「サクッとわかる ビジネス教養」の第1弾『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』と『サクッとわかる ビジネス教養 中国近現代史』がいずれも版を重ねており好調だ。

 

『サクッとわかる ビジネス教養 地政学』=四六判/160㌻/本体1200円

 

 特に、『地政学』編の反響が大きく、初速の伸びを見て実施した大型店での展開がさらに押し上げ、現在4刷5万部(電子版含む)に達している。同社は今後も販促資材や全国紙への広告出稿を準備し、継続して販促を盛り上げていく。

 

 同シリーズは、近年ブームとなっている「教養本」ジャンルで、本を読んで知っているだけでなく、より一歩踏み込んだコミュニケーションツールとしての教養を学べる。専門家による監修と豊富な図解で、「だれもが忙しい時代に、短い時間で、しっかりした教養を身に付ける」をコンセプトに立ち上げた。年に3回、2冊ずつの年間6点の刊行予定で、第2弾の「行動経済学」と「統計学」は10月末に刊行する。実用出版社としての歴史と実績を持つ同社だが、同シリーズでビジネス書市場への本格的な参入も視野に入れる。

 

『中国近現代史』=四六判/192㌻/本体1300円

 

 今回の新刊『地政学』と『中国近現代史』は、昨今大きく揺れ動き、ビジネスへの影響と切り離すことができない国際情勢を深く知るための、今重要な二つの視点としてフォーカス。

 

 『中国近現代史』は現在2刷累計1万8000部。『地政学』編は現在4刷累計5万部と特に好調な売り上げを示している。

 

事前プロモーションに注力

 

 通常、新刊であれば2カ月前から始める受注営業も、新シリーズの認知度を広めるため、同社では今年の2月から開始。オンラインでゲラを閲覧出来るサービス「NetGalley」も活用し、全国の書店員にリーチできた。レビューも多く寄せられ、各書店からの反応も良く、『地政学』は初版部数8000部から9000部に増やした。

 

 発売開始時から強く仕掛けていこうと、箱POPを用意し、Facebook広告や書店店頭にデジタルサイネージも掲出したことで、発売10日で消化率15%を達成。すぐに重版を決定し、2刷8000部、3刷1万2000部、4刷2万部と刷り部数も伸ばしていった。

 

 発売後はNetGalleyのレビューを載せた広告を日本経済新聞に出稿したほか、同社ウェブマガジン「Fun―Life!」でのコンテンツ発信など、各メディアへの露出も増やし、効果を上げたという。

 

書店での大規模展開が奏功

 

 初速の好調を受け、三省堂書店神保町本店で7月1日から31日までの1カ月間、1階下りエスカレーター横のフェアスペースで展開。監修者が同書を紹介する動画も制作して流したところ、多くの来店客の目に留まり、フェア期間中に259冊を売り上げた。「同店でここまで売り上げるビジネス書は久しぶりだと好評価をいただいた」と同社営業本部次長・金子拓郎氏。三省堂書店有楽町店でも7月9日から31日まで、1階と2階のフェア台で多面展開し、199冊を売り上げた。

 

丸善丸の内本店3階の展開の模様

 

 ジュンク堂書店池袋本店と丸善日本橋店での反応も良かったため、丸善丸の内本店で7月28日~8月11日までの2週間の大規模展開を実施。各階にポスターを掲出、フェア棚での多面展開で、開始日から8月2日までの6日間で153冊を売り上げている。

 

 同社営業本部長・酒井修氏は「丸善からうちの本の火が付くのは珍しい。おそらく客層も変わってきていて、今まではカッチリとした目的買いが多かったが、こういったやわらかいビジネス書を買う層も増えてきている」と今回の反響について分析する。

 

 「事前の仕込みを十全に出来たターミナルの大型店だけでなく、都心部の小さな書店でも売れ行きが良い。タイムラグはあるが、全国の書店でもじわじわと伸びてきている。特に沖縄のジュンク堂では40冊も売り上げている」と話す。

 

 今後の販促について、「Fun―Life!」と三省堂書店神保町本店で流した動画データや各種拡材を書店に提供、Facebook、全国紙への広告出稿を予定し、拡売を進めていくという。