出版社49社が集まり開催されていた、初のオンライン大規模合同商談会「書店向けWeb商談会(β版)(以下Web商談会)」が7月17日に終了した。当初の6月29日から5日間だった予定を、7月17日までの3週間に延長(開催日数は平日15日間)。全国から書店員104人が参加し、計262回(うち1対1が253回)の商談が行われた。委員会がこのほどまとめた報告書から「オンライン商談」の今後を読み取ってみたい。
【堀鉄彦】
①次回参加意向
参加出版社中の92%、書店の91%が「次回も参加したい」と答えた。初めての開催だったが、一定の成果をあげたことが、ここからうかがえる。
出版社が参加したい理由としてあげたのは、「コロナ禍の収束が遅れそう」「コロナに関わらず、今後の営業スタイルの新しい形態になっていくと思われる」「Web商談を今後も希望する書店がある」と、中にはアフター・コロナも見据えた形の回答も見られた。
書店は、参加したい理由として「コロナの影響で出版社と話す機会が減ったため」「コロナが流行している今、感染のリスクを減らすことができるため」と、新型コロナ感染拡大時の対応を理由にしている。
その一方、「情報を直接、ライブに近い形で得られる」「移動時間や開催場所を問わず参加できる」「会場商談会よりも合理的」など、本商談会がコロナ禍収束後にも通用する手段であることを示す回答もみられた。
②満足度
「回数も質も満足」と答えた出版社は全体の32%。しかし、「回数は物足りないが質は満足」は45%、「回数も質も物足りない」の8%と合わせて「回数」への不満をあげた出版社が53%になった。
満足した理由は、「遠方でもお会いできる」「初対面でも顔を見て話せる」「画面共有は紙を見せるより便利」「事前に書店にご予約いただくことで、資料など事前に準備ができるため、訪店営業に比較して落ち着いて話ができる」といった理由が挙げられた。
③ 出展社が行った集客施策
実験開催ということもあり、出版社の取り組みにはかなりの温度差があった。全国書店7000軒にFAX・各営業声掛け&メール(本部も)、絵本専門店120軒にDM、本部含めた100軒ほどへのメールなど、各社がそれぞれの手段で告知した一方、業務上の影響を抑えるため「特に何もしなかった」という社も。
1対1で行う商談は全社合わせて253回行われ、商談数の多かった出展社の上位3社は、朝日出版社(28回)、パイ インターナショナル(22回)、亜紀書房(20回)だった。上位は、電話やメールなどで、プッシュ営業を行った出版社が中心だった。
出版社1社の説明に複数の書店員が参加する「1対N」型商談は、5社で計9回実施し、合計34人が参加。最も多い説明会で12人の参加があったという。
④不参加の理由
課題となったのは、日常業務が忙しい書店員への配慮だ。たとえば「商談が業務時間内に行われたか」との問いには32%が「いいえ」と回答。通常の業務時間中での商談時間の確保が難しい書店員が一定数いることが明らかとなった。
参加を見送った書店員29人からは「業務として商談に時間を割ける権限がない」(52%)との回答が最も多く寄せられた。また「どうしたら参加できるか」との質問でも「上長の指示・許可があれば」(48%)という回答が1位だった。
次回開催は10月5日から2週間
次回は10月5日から、2週間の会期で開催されることが決まった。8月24日から新規出展社の公募を開始(前回出展社はこれ以前に受付開始)。9月7日から、書店向け告知と商談予約を開始する予定だ。
システムの一部を見直してよりスムーズな商談ができるようにしたうえで、広く参加出版社を募集する。100社以上の出版社の参加を見込んでいる。
〈開催概要〉書店向けWeb商談会(β版)
当初会期:2020年6月29日(月)~7月3日(金)の5日間
延長会期:2020年7月6日(月)~7月17日(金)の平日10日間
商談方法: Zoom を使用
URL:https://dms838.wixsite.com/web-shodankai
▼出展社
▽当初会期(47社):語研、ブロンズ新社、グラフィック社、マール社、Jリサーチ、西村書店、リトルモア、ポプラ社、アシェット・ジャポン、芸術新聞社、求龍堂、武蔵野美術大学出版局、晶文社、白水社、国書刊行会、パイ インターナショナル、合同出版、食べもの通信社、彩流社、東京美術、亜紀書房、ラボ教育センター、太郎次郎社エディタス、廣済堂あかつき、かもがわ出版、ロクリン社、好学社、ひさかたチャイルド、絵本館、のら書店、子どもの未来社、光村図書、クレヨンハウス、視覚デザイン研究所、出版ワークス、ビーナイス、アノニマ・スタジオ、朝日出版社、偕成社、青弓社、現代書館、チャールズ・イ・タトル出版、自然食通信社、大和書房、大日本図書、新星出版社、ミシマ社
▽延長会期(38社):ライツ社、ジャムハウス(以上2社は延長会期から出展)、リトルモア、朝日出版社、光村図書、西村書店、亜紀書房、国書刊行会、自然食通信社、出版ワークス、太郎次郎社エディタス、アシェット・ジャポン、チャールズ・イ・タトル出版、絵本館、大日本図書、ミシマ社、彩流社、東京美術、新星出版社、好学社、ひさかたチャイルド、ビーナイス、クレヨンハウス、食べもの通信社、求龍堂、白水社、武蔵野美術大学出版局、青弓社、現代書館、のら書店、大和書房、視覚デザイン研究所、合同出版、晶文社、子どもの未来社、ロクリン社、Jリサーチ、パイインターナショナル(以上36社は当初会期から継続出展)