第44回すばる文学賞 木崎みつ子「コンジュジ」に決まる

2020年9月9日

 第44回「すばる文学賞」(集英社主催)の選考会が9月4日に開かれ、受賞作は木崎みつ子氏の「コンジュジ」に決まった。木崎氏は1990年、大阪府生まれ。受賞者には正賞の記念品と副賞の100万円が贈られる。なお、贈賞式は関係者のみで執り行う予定。祝賀パーティーは開催しない。

 

 第44回の応募総数は1146編、選考委員は奥泉光氏、金原ひとみ氏、川上未映子氏、岸本佐知子氏、堀江敏幸氏が務めた。受賞作は10月6日発売の月刊文芸誌『すばる』11月号に掲載する。

 


 

〈作品概要〉

 

 仕事を失い手首を切った父、我が子の誕生日に家を出て行った母——小学生のせれなは、過酷な環境に生きている。父が新しい「お母さん」だと言って外国人の女性を連れてくるものの、家事をして独りでごはんを食べる日々は変わらなかった。

 

 そんな孤独な生活を続ける中、忘れもしない一九九三年八月十九日の深夜、十一歳となったせれなは、リアン・ノートンに恋をした。テレビ画面に現れたその美しい人は、伝説のロックバンド「The Cups」のボーカルで世界的スター。追悼番組で初めて目にした彼は、もはや会うことは叶わない存在だが、「お母さん」が出て行ったのち父から性的虐待を受けるようになったせれなにとって、生きる支えとなり、心の恋人となる——