出版ワークス(神戸市・工藤和志社長)は、10月末に発刊する絵本2作品に、同社として初めて、朗読音声などが聞けるQRコードを掲載する。コードをスマホやタブレット、PCで読み込めば、読み聞かせの音声やオリジナル楽曲が流れる。工藤社長は狙いについて、「読書時間が減少する中、親子が一緒にコミュニケーションするためのツール絵本をつくりたかった」という。
朗読は、女優でラジオパーソナリティの今安琴奈さん。ミュージシャンで幼児教育の専門家でもある今安志保さんが、オリジナルの楽曲演奏を行う。本や文章のつくり方、間のとり方など本と音読を一体化する仕組みで、文字が読めない幼児や、絵本を読む習慣がない子どもたちの興味をひき、想像力をかきたてる。
発刊する『大きな古時計』は、2012年に55歳で死去したイラストレーターの伊藤正道さんが手がけた絵本の復刻版。伊藤さんが名曲「大きな古時計」の歌詞をベースに絵を展開。親子が一緒に歌い、絵を繰り返し読むことで、子どもの情緒や知性の発達を促す神経細胞を活性化する効果があるという。
絵本『ハイジ 上巻~出会い~』(ヨハンナ・スピリ原作、高原ゆかり・絵)は、児童小説の『ハイジ』を絵本化。小説の良さを残すためあまり文章を短くせず、高原さんが全ページ、キルトを使って作画全面を制作し、独特の優しい印象に仕上げた。
また、音声が物語の世界に入り込んだような空想力を広げる。小学3年生以上の児童が対象で、下巻の発刊は年明けになる予定。
工藤社長は、「どちらの作品も、音を流すだけで子どもの興味をひく工夫をしている。子どもの心の発達のためにも、親子でいっしょに本を読む時間を大切にしてほしい。書店向けにはPOPなどの販促物を用意しており、ギャラリーでの原画展なども計画している」という。
【櫻井俊宏】