教養文庫シリーズを持つ出版社6社共同で、毎年実施しているフェア「チチカカコヘ」――。第7回となる今回のフェアは、来年2021年1月下旬からスタートする。新型コロナウイルスの世界的な流行が続く中、フェアのメインタイトルは「教養と生きよう」に決まった。6社の編集長らが「今だからこそ読んでほしい」と選書した学術系文庫の中には、コロナ禍でどう考え、生きていけばいいのか、ヒントになるような本も並ぶ。「来店者の新たな出会いの場、学びにもつながるフェア」と、多くの書店に参加を呼びかける。
コロナ禍で「教養と生きよう」
このフェアは、もっと多くの読者に学術書、人文書のおもしろさを届けたいという共通の思いから、6年前に始まった。現在は筑摩書房「ちくま学芸文庫」、中央公論新社「中公文庫」、KADOKAWA「角川ソフィア文庫」、河出書房新社「河出文庫」、講談社「講談社学術文庫」、平凡社「平凡社ライブラリー」の6社が参加している。
今回のフェアも、基本的には昨年と同様に実施する。各レーベルの編集長らが、メインタイトル「教養と生きよう」に沿って、「人間を知る/人文」▽「より良く生きる/社会」▽「宇宙の理を解く/自然」▽「世界はどこへ行く/歴史」――の4ジャンルごとに、それぞれ2点を選書。6社合計で全48点を集めた。
今回のフェアのセットは2パターン。Aセット「48点×各5冊=計240冊」はセット本体25万8895円(予価)と、Bセット「24点×各3冊=計72冊」はセット本体7万7622円(同)を用意している。出荷条件は3カ月延勘。注文締め切りは10月23日。搬入予定は来年1月下旬。
フェアセットに含まれるのは、「A4フェアパネル」(1枚)、書籍24点に1枚ずつ付く編集長手書きの「オススメPOP」、ジャンル別「大判POP」のほか、全48点の本を編集長自らが紹介し、他社の編集長も寸評した「小冊子」も付く。
新たな教養との出合いの場に
筑摩書房営業部販売課の横山絢音氏によると、今年は新型コロナの影響もあり、フェア開始を例年より1カ月ほど遅らせた。また、選書のジャンルの一つを、「世界を感じる/芸術」から「世界はどこへ行く/歴史」に変えた。
横山氏は「新型コロナをきっかけに、歴史書に再び注目が集まっている。未曾有の危機の中で、私たちが置かれている状況を、過去の歴史から見直したり、今の日本や世界の位置づけを確認したいという機運が高まっている」と、「歴史」ジャンルをあらためて設けた理由を説明する。
実際に、歴史のジャンルに関わらず、『感染症の世界史』(角川ソフィア文庫)▽『マクニール世界史講義』(ちくま学芸文庫)▽『医学の歴史』(講談社学術文庫)▽『細菌と人類―終わりなき攻防の歴史』(中公文庫)――といった本も、今回のフェアで店頭に並ぶことになる。
コロナ禍に直面し、過去の出来事に学ぼうとしたり、歴史に解決のヒントを求めようとする人も多いようだ。「そういった読者と、新しい教養との出合いにつながるような本もたくさん選ばれている」。
「初めての書店もぜひチャレンジを」
また、普段は教養書や人文書の棚に行かないような人にも、フェアを展開することで、手にとってもらえる機会が増える。毎年続けていることで、「チチカカコヘ」の認知度も上がり、フェアを実施する書店も増加。今では全国の500店ほどが参加している。
コロナ禍で、すき間時間を読書に費やしたり、自宅近くの書店で本を買い求めるなど、新しい生活様式も見られる。「普段は教養書を読まない人や、他のジャンルやレーベルを読んだことがない人など、新たな読者にも訴求できるフェア」と横山氏。
「初めて参加してくれる書店も増えている。人文書や学術書も置いてみたいがどうすればという書店も、このフェアが良いきっかけになるはず。ぜひチャレンジしてもらいたい」と呼びかけている。
【増田朋】