出版業界で存在感を増す「note」 相次いでリアル×オンラインイベント開催

2020年10月15日

noteフェス トークセッション「僕たちに『企画』はいらない」 右から編集者の柿内氏、漫画家の羽賀氏

 

 出版業界で存在感を増しているメディアプラットフォーム「note」。5月の月間アクティブユーザーは6300万を突破し、法人アカウントも累計1600件を超え、個人・法人、プロ・アマを問わず、クリエイターを中心に利用が広がっている。9月2~5日にかけての4日間、オンラインイベント「note CREATOR FESTIVAL」が開催され、トークセッションなどをライブ配信し、累計再生数は29万回以上に達した。

 

 さらに10月14日からは、出版社12社と共同で読書感想文投稿コンテスト「#読書の秋2020」を開催している。10月下旬には青山ブックセンター本店とSPBS TOYOSUで課題図書の店頭フェアを展開する。同コンテストに関連して、11月から読書にまつわるオンラインイベントを4週連続で実施する予定だ。リアル×オンラインのイベントを相次いで開催しているnoteの取り組みについて紹介する。

 


 

クリエイターの街として成長、イベントスペースも開設

 

イベントスペース「note place」会場貸し出しだけでなく、配信サポートなども

 

 2014年にスタートした「note」は、クリエイターが文章やマンガ、写真、音声などのコンテンツを自由に投稿できるソーシャルサービス。昨年3月に法人向けプラン「note pro」をリリースすると、出版業界からは「文藝春秋digital」や「ムーPLUS」などが、サブスクリプションメディアのプラットフォームとして採用。このほかにも多くの出版社がオウンドメディアとして積極的に活用し、「電子出版アワード2019」(主催:日本電子出版協会)の大賞とデジタル・インフラ賞をダブル受賞した。

 

「noteフェス」の撮影が行われている様子

 また、今年4月、社名を株式会社ピースオブケイクからメインサービスと同じ「note株式会社」に変更。ウェブサイトのアドレスを「note.mu」から「note.com」に移行した。

 

 6月にはイベントスペース「note place」(東京・渋谷区)をオープン。カメラや照明、インターネット回線など、配信のための設備を取り揃えているほか、会場として貸し出すだけでなく、イベントの企画・配信サポート事業も行っている。

 

“創作”の輪を広げる祭典「note CREATOR FESTIVAL」

 

リアル×オンラインの融合で“創作”の輪を広げる祭典、VimeoとTwitterでライブ配信

 

 9月2~5日にかけて、リアル×オンラインの融合で“創作”の輪を広げる祭典「note CREATOR  FESTIVAL」(以下:noteフェス)を開催した。「つくると、つながる!」をコンセプトに、編集者や作家を始めとするさまざまなクリエイターが、それぞれのテーマで「創作」について語り合い、合計10回のトークセッションをライブ配信した。

 

 開催初日は『ハト部』を連載している漫画家の羽賀翔一氏がトークセッション中に原稿を描いたり、視聴者から寄せられたコメントを取り上げたりするなど、リアルとオンラインを織り交ぜながらイベントを盛り上げた。各トークセッションはYouTubeで見逃し配信しているほか、視聴者が「note」上に投稿したレポートを紹介している。

 

新エディタや新デザイン、DM機能の実装に向けて開発進める

 

左から加藤貞顕CEOと深津貴之CXO

 

 最終日のトークセッションでは、同社・加藤貞顕CEOと深津貴之CXOが「noteが目指す創作の街」と題して、今後のサービス展開などについて語った。加藤CEOは新しいエディタを開発していると明かし、「今までと使い勝手が変わるわけではなく、今まで以上に自然に使えるように改善する」と述べた。深津CXOによると、「見出し」や「キャプション」、「投稿画面」などを改め、総合的に拡張性を持たせていく方針だという。

 

 また、トップページのデザインを変更し、メディア化を強化する。深津CXOは「各カテゴリのトップページにサブコンテンツを並べ、雑誌のようなデザインにする」と話した。このほか、ダイレクトメッセージ機能の実装に向けて、開発を進めているという。

 

 セキュリティを万全とするため、実装時期は未定としつつも「ダイレクトメッセージ機能を出版社からクリエイターへのコンタクト、ファンやクリエイター同士が交流する軸としていく。究極的には送金も可能とすることで、仕事の依頼から支払いまでできるようにしたい」と構想を語った。

 

盛況のうちに終了したnoteフェス 最終日にスタッフ、公式サポーターで記念撮影

 

 4日間開催されたnoteフェスの事前申込みは5732人、最高同時視聴数は1800人、配信映像の累計再生数(Vimeo+Twitter)は29万回以上を記録。ハッシュタグ「#noteフェス」を付けたツイートを呼びかけ、6100件以上の投稿があった。

 

 イベント参加者が「note」で公開した感想・レポート記事は1000件以上にのぼり、視聴して終わりではなく、SNSで感想を発信したり、自分も創作をしようと奮起したりする声が聞かれた。同社PR担当の関矢瑞季氏は、「noteフェスをきっかけに新たな創作が生まれたこと、クリエイターが生まれたことが、何よりの成果だった」と話している。

 


 

10月14日から開催、出版社12社と共同で読書感想文投稿コンテスト

 

「#読書の秋2020」10月14日から11月30日まで

 

 メディアプラットフォーム「note」全体の投稿数に占める読書関連記事の比率は、20年上半期実績で前年比42%増加した。投稿された読者の感想は、書籍のプロモーションに活用されるなど、広告宣伝ツールとして注目を集めている。

 

 noteはさらに読書を盛り上げるため、10月14日からで読書感想文投稿コンテストを出版社12社(KADOKAWA、河出書房新社、幻冬舎、光文社、集英社、ダイヤモンド社、ディスカヴァー・トゥエンティワン、日経BP、早川書房、文藝春秋、ポプラ社、ライツ社)と共同で開催。10月下旬には青山ブックセンター本店とSPBS TOYOSUで、課題図書の店頭フェアを行う。フェアの書籍を2000円(税込)以上購入すると、noteのオリジナルノートをプレゼントする。

 

課題図書一覧はnoteの公式ページに記載(https://note.com/info/n/n61a1650f2811

 

 コンテストの参加方法は、noteアカウントで会員登録(ログイン)し、「#読書の秋2020」と「#(書籍タイトル)」のハッシュタグをつけて、期間中に出版社が提示した課題図書の感想を「note」へ投稿すること。各出版社が投稿された感想文を選定し、優秀賞と賞品を贈る。開催期間は10月14日から11月30日、結果発表は12月中旬を予定している。

 

 また、同コンテストに関連して、読書にまつわるオンラインイベントを4週連続で行う。イベント詳細は後日、noteのイベント情報ページで発表する。予定しているイベントは次の通り。

 

4週連続 読書にまつわるオンラインイベント

 

▽11月4日(水)20:00〜21:00

 文芸編集者が語りつくす!「今年の推し本」
 登壇者:小林順氏(KADOKAWA 文芸単行本編集一課 編集長)、谷口愛氏(集英社 文芸編集部)、花田朋子氏(文藝春秋 文春文庫局局長)


▽11月11日(水)20:00〜21:00

 本屋の未来〜リアルとオンラインの交差点のつくりかた
 登壇者:福井盛太氏(合同会社SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS FOUNDER/CEO)、山下優氏(青山ブックセンター本店店長)


▽11月18日(水)20:00〜21:00

 ビジネス書編集者が語りつくす!「今年の推し本」
 登壇者:今野良介氏(ダイヤモンド社 編集者)、中川ヒロミ氏(日経BP 編集者)、林拓馬氏(ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集者)

 

▽11月25日(水)20:00〜21:00

 本×デジタルの未来 公開大会議
 登壇者:大塚啓志郎氏(ライツ社 代表取締役/編集長)、山口晶氏(早川書房 執行役員)

 


「note CREATOR FESTIVAL」見逃し配信

「暮らしをクリエイトする」(坂口恭平×有賀薫)

 

僕たちに「企画」はいらない(羽賀翔一×柿内芳文)

 

これからのファンとの向き合い方(小泉文明×中川悠介)

 

インターネット時代の新教育(ヨビノリたくみ×吉村総一郎)

 

noteフェス前半戦を岸田奈美さんと振り返る中間セッション

 

体験価値のニューノーマル(龍崎翔子×鳥羽周作)

 

人間の輪郭を文学とテクノロジーから読み解く

(平野啓一郎×松尾豊)

 

 

上手くなる方法と、強くなる方法(石川善樹×森内俊之)

 

なんで僕たちに聞くんだろう。(幡野広志×浅生鴨)

 

noteが目指す創作の街(加藤貞顕×深津貴之)