竹林館 新鋭画家の画集『Parisの色』刊行、コンセプトは「絵で楽しむパリ散歩」

2020年10月30日

「紙ならではの作品、大切にしていきたい」と左子氏

 

 詩集、エッセイ、小説、哲学などの人文系から童話、写真集など多岐にわたるジャンルを出版する竹林館(大阪市・左子真由美社長)は10月20日、フランス・パリの風景を「色」に焦点を当て、エッセイも掲載した画集『Parisの色』(近藤貴洋)を刊行した。

 

 愛知県出身の近藤氏は、絵を学ぶため、パリに留学し、帰国後もカルチャースクールの講師などを務めながら、パリを訪れては情景や人々を描き続けている。

 

 度々フランスに旅行し、パリが好きだという竹林館・左子社長がSNS上で近藤氏の絵を見つけて繊細な画風や色づかいに感銘を受けた。フェイスブックを通じてアプローチし、昨年、大阪で開かれた近藤氏の個展に訪れるなど同氏の絵に惹かれ、画集刊行を打診した。

 

エッセイにも注目

 

 近藤氏が「画集」として世に出すのは初めて。色づかいにこだわり、目次も「ベージュ、ピンク、青…」と、メインの色別に紹介している。さらに、描いた場所における近藤氏の思い出やエピソードも掲載。

 

 左子社長は「近藤さんの絵はとても優しいタッチで、見ていて気持ちが和らぐ」と称し、また「絵だけでなく、文才もある。エッセイ『ワイン屋』や『セーヌ川』などはとても読み応えがある。絵の美しさと同時に読み物としても楽しめる」と話す。

 

 画集として鑑賞にも適しているが、フランス旅行などに持ち運びやすいよう装丁はソフトカバーに仕上げた。初刷は1200部ながら、ネット書店などからすでに1000部近い予約注文が入っている。書店には主に地方・小出版流通センター経由で流通する。

 

 左子社長は「コロナ禍で海外旅行どころではないけれど、パリが好きな人や行ってみたいと思っている人は本書をめくってパリの空気感を味わってほしい」とコメント。書店には「写真集、旅行ガイドなどいろんなコーナーで展開できる。美しい表紙を前面に出してPRしていただきたい」と呼びかけていた。

 

「竹林館」の歴史は半世紀

 

 竹林館は2004年に大阪・北区で開業したが、その由来は50年以上前に遡る。左子氏は高校の頃から詩をしたためる文学少女。大学生のとき、ある男子学生が学内で「竹林館」の出版社名で「ガリ版刷り」の詩集を販売していた。「竹林館」の命名は男子学生の住吉高校時代の仲間たちによるもので、以来その名を踏襲している。

 

 左子氏は卒業時、出版社への就職を目指すが、残念ながら縁がなく、約30年、他業界に身を置いた。その間も同人雑誌のメンバーと詩誌「PO」を創刊(1974年)するなど詩、文学への熱い思いを持ち続けた。同誌は現在も継続している。

 

文学への情熱持ち続ける

 

 左子氏は会員約250人を誇る「関西詩人協会」の代表も務める。関西では1948年に井上靖氏(1907~91年)が近畿詩人会を創設したが、氏の東京移住を機に短期間で解散。詩人会に触発された面もあり、関西詩人協会が設立された。初代代表には杉山平一氏(1914~2012年)、二代目は有馬敲氏、左子氏は3代目の代表となる。

 

 左子氏は「辞書のように電子の方が便利なジャンルもあるけれど、詩集などは『文字を読む』だけじゃなく、本の手触り、カバー、表紙、帯も含めての作品。これからも大切にしていく」とし、竹林館としては「詩集同様に、今回の画集のようにカラー作品など見て楽しめる本も出していきたい」と展望を語ってくれた。

【堀雅視】

 

□画集『Parisの色』=単行本(ソフトカバー)/120㌻/本体1600円