故郷・福岡で「没後70年 吉田博展」 毎日新聞社など主催

2020年11月11日

「光る海」(1926年)

 

 明治、大正、昭和にかけて風景画の第一人者として活躍した吉田博(1876~1950年)の木版画などを集めた「没後70年 吉田博展」が10月16日、福岡県立美術館(福岡市)で開幕した。毎日新聞社、RKB毎日放送、同美術館主催。12月13日まで。

 

自宅アトリエで筆を執る吉田博(1949年)=岡田紅陽撮影

 

 福岡県久留米市に生まれた吉田は、若くから洋画修業を開始。当時の日本人としてはまれな何度もの海外体験を通じて東西の芸術作法を見つめ、自身の技に磨きをかけた。

 

 水彩、油彩の分野で才能を発揮していた吉田が木版画を始めたのは49歳の時。西洋画の微妙な陰影を版画で表現しようという前代未聞の挑戦で、水の流れや光の移ろいなどを驚くほど繊細に描くことに成功した。

福岡県立美術館で開幕した没後70年「吉田博展」で作品に見入る来場者たち

 本展は吉田が後半生に力を注いだ木版画約200点を中心に紹介している。英国の故ダイアナ妃が執務室に飾っていた「光る海」をはじめ、山岳風景や旅先の情景など「超絶技巧」と評される作品が並ぶほか、版木や写生帳もあわせて展示している。

 

 さらに水彩画「上高地の夏(穂高山と梓川)」(1915年、九州大大学文書館蔵)が初めて特別公開されている。九州帝国大医科大(現・医学部)教授を務める傍ら、美術批評や美術コレクターとしても著名だった中山森彦の旧蔵品で、手前に梓川、奥には雄大な穂高山を油絵風の重厚な筆致で描き出している。縦67・0㌢、横99・3㌢(上辺)/98・6㌢(下辺)は吉田の水彩画としては最大級だ。

 

 一般1200円、高大生800円、小中生500円。前期と後期(11月17日~)で一部の作品を入れ替える。月曜休館(11月23日は開館、翌24日休館)。問い合わせは同館(092・715・3551)。