書店の地域貢献 三洋堂書店橿原神宮店が高校生の「書店クラブ」に協力

2020年12月7日

 奈良県の高等学校で今春から書店と連携したクラブ活動「書店クラブ」が始まっている。実際の書店店頭に〝部室〟を常設し、お薦め本のPOP作りやアンケートなどを実施。来店客の反応もまずまずで、書店の地域貢献の取り組みとして注目される。

 

 「書店クラブ」の活動を始めたのは奈良県立橿原高等学校。現在、2年生と1年生の部員3人が、学校から徒歩30分ほどの距離にある三洋堂書店橿原神宮店の2階レジ横に机の〝部室〟を設けて活動している。

 

店頭に設置した机の〝部室〟

 

 机では、部員が月ごとのテーマで選んだお薦め本のPOPを掲出するほか、アンケートを募り結果を階段ホールに掲示している。

 

 部員が紹介して仕入れた『ディズニー みんなが知らない白雪姫 なぜ女王は魔女になったのか』(講談社)は6冊中4冊を販売。7月に設置した最初のアンケート「高校生におすすめしたい本」には60件ほどの回答が寄せられるなど、反応は上々だ。

 

 クラブの顧問を務める藤井謙太郎教諭は「今年最初の出勤日に校長が『生徒に地域に貢献する経験をさせたい。書店を部室にして活動できたら面白いのでは』と話したのがきっかけでした」と話す。

 

 「知的好奇心を持った人々が集まる書店なら、生徒が知的刺激を得られるのでは、という発想が生まれ『書店クラブ』の構想に至りました。地域の方々との交流の中で生徒が成長し、書店という空間の価値を実感することに期待しています」と藤井教諭。

 

6月から活動開始

 

 まず、学校から一番近い三洋堂書店橿原神宮店に打診し、2月から藤井教諭が店舗との打ち合わせを開始。4月の活動開始を予定していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で活動を開始できたのは6月だった。

 

 部員は「朝の読書活動」でクラスの担当を務め、「お薦め本として書いたプリントのクオリティーが高かった」ことから藤井教諭が声をかけた当時1年生だった奥村奈菜子さんと、新子双葉さんが入部。その後、今年入学した「将来は本に関わる仕事をしたい」という森本大悟さんも加わり活動をスタートした。

 

左から部長の奥村さん、新子さん、森本さん

 

 部長を務める奥村さんは、「本が好きで書店での活動に興味を持ちました」と話す。実際に書店で活動してみて「バックヤードなど普段は入れないところにも入ることができて面白い」という。

 

 部員は2週に1回ぐらいのペースで放課後2時間ほどを、店舗の休憩室でPOPを書いたりアンケートをチェックするなどして過ごす。

 

年末に向けて開始したアンケート

 

 「これからはアンケートで薦められた本を図書館で紹介するような活動もしたい」と奥村さんは他の生徒へのフィードバックも考えている。いまは年末に向けて「My Best Book2020」を募っている。 

 

店舗でも効果を実感

 

 同店でクラブを担当する河端真也主任は、「高齢なお客様が、高校生がどんな本を読んでいるのか興味を持ってくださったり、部員の友達が来店してお薦め本を見ていくなど盛り上がっています」と手応えを話す。「効果も感じているのでこれからも続けていきたい」という。

 

 同社で関西地区を担当する店舗運営部関西ブロックマネジャー・竹内大裕氏はこの取り組みについて「当社は地域の書店でありたいと考えており、地元で愛される高校のお手伝いができると考え協力しました。応援していただけるお客様も多く、地域貢献できていると考えています。可能であれば他の地域にも広げていきたい」と話している。

 

 三洋堂書店橿原神宮店は1階150坪、2階230坪の計380坪。

 

三洋堂書店橿原神宮店

 

所在地=〒634―0045奈良県橿原市石川町3―2/電話=0744(27)5734/営業時間=9~24時、年中無休