noteと文藝春秋が資本提携 出版文化の新しい価値を創造、社員交流や新コミュニティ創出へ

2020年12月10日

左からnote・加藤代表取締役CEO、文藝春秋・中部嘉人社長

 

 メディアプラットフォーム「note」などを展開するnote㈱は12月10日、㈱文藝春秋を引受先とする第三者割当増資を実施し、資金調達と資本業務提携契約を締結した。

 

 両社は共同でクリエイターの発掘と育成、コミュニティの創出や各種イベントの共催など、クリエイターの活躍の場を広げ、noteが掲げるミッション「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」の実現に努めるとしている。また、知識や技術習得を目的とした、社員交流も行う予定だ。

 

イベントなどを共同開催、デジタル文芸賞・新人賞も検討

 

 具体的には業務提携で、①クリエイターの発掘と育成②新コミュニティの創出やイベントでの協業③社員交流④新規事業の展開――を進めていく。


 ①クリエイターの発掘と育成では、㈱文藝春秋の編集者とnoteディレクターらが定期的に情報交換し、出版文化の未来を担う有望な人材の発掘と育成を行う。また、note上でデジタル文芸賞・新人賞その他のコンテストを共同で実施することも目指すとしている。

 

 ②新コミュニティの創出やイベントでの協業では、両社のネットワークや技術および知見を持ち寄り、クリエイターと読者・視聴者・観客等が相互に交流する新たなコミュニティを構築し、イベントを共同開催していく。


 ③社員交流では、㈱文藝春秋がデジタル面における技術・知識を習得し、note㈱が書籍や雑誌の編集技術を習得することを目的として、両社でそれぞれの社員が勤務する「社員交流」を実施する。


 ④新規事業の展開では、民間企業や公的機関に対しての有償サービスの提供など新規事業のための意見交換を行う。

 

プリントメディア×デジタルメディア、両社で出版文化の新しい価値を創造


 note㈱・加藤貞顕代表取締役CEOは「今回、文藝春秋社と提携することは、大変うれしく、光栄なことだ。伝統ある出版社にしかできないことと、私たちが得意なこと、両社の強みを生かして、だれもが創作をはじめて続けられる未来をつくっていきたい」とコメントしている。


 発表したコメントの中で、㈱文藝春秋・中部嘉人社長は「出版業界では今、プリントメディアとデジタルメディアの垣根がなくなりつつある。プリントメディアで活躍していた書き手はデジタルメディアで発信し、デジタルメディア出身の書き手はプリントメディアに進出する。『デジタルはプリントの対抗軸』と考えられていた時代は終わり、今やコンテンツは両方の空間を自由に行き来している」とメディア環境の変化を指摘。


 そのうえで、今回の資本提携に対し、「読者一人一人が自分に最適なフォーマットでコンテンツを楽しめる時代になった。文藝春秋が新たな時代に適合し、この先も読者にずっと良質なコンテンツを届けていくうえで、noteとの協業は大きな効果をもたらすと信じている。ともに出版文化の新しい価値を創造していければと思う」と期待を込めた。

 

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