「総額表示を考える出版事業者の会」は11月12日、消費税転嫁対策特別措置法(以下、特措法)の失効に伴う総額表示の一律義務化に反対し、消費税法改正を求める提言をメディアプラットフォーム「note」で発表した。提言は税別価格表示の恒久化を求めるもので、12月11日現在、賛同する出版事業者は180事業者となり、さらに署名キャンペーンも実施し、1800人超の個人署名が集まっている。
提言書は日本書籍出版協会、日本出版取次協会、日本書店商業組合連合会などの業界団体へ提示し、署名は2021年1月ごろ、国会議員等に提出する予定だ。
現状維持を求める声が相次ぐ
21年4月1日から全ての商品で消費税を含んだ総額表示が義務づけられる見通しとなり、出版業界からは現状維持を求める声が相次いでいた。
特措法は同3月31日に失効し、書籍・ムックなどの出版物にも適用されていた消費税別価格表示(例:本体○○○円+税)の特例措置が終了する。それに伴って消費税法に基づき、事業者が消費者に対して価格表示を行う場合、総額表示(税込価格)が義務化される。なお、総額表示義務の違反について、消費税法上の罰則はない。
これまで財務省は「何らかの形で税込価格が表示されていれば、他の箇所に税抜価格を記載していても問題ない」として、書籍などに挟み込まれているスリップのボウズへの価格表示も「引き続き有効」と説明してきた。
市中在庫の違法状態化を懸念
「総額表示を考える出版事業者の会」は、鈴木茂氏(アルテスパブリッシング)、木瀬貴吉氏(ころから)、工藤秀之氏(トランスビュー)ら3氏の呼びかけに賛同する出版事業者有志によって結成。11月12日に「総額表示の一律義務化に反対し、消費税法の改正を求めていく提言」を公開し、賛同する事業者(出版社、取次、書店等を営む法人、個人事業主)の募集を開始した。
提言の中で同会は、「すでに流通している本が『違法』状態におかれるだけでなく、数年から数十年の単位で流通する本は、税率変更のたびにカバー等の交換を迫られることが容易に想定される」とし、「スリップへの表示など代案が示されているが、将来、消費税率変更の可能性もあるため、事業者としての負担が減るものではない」と指摘。
そのうえで、消費税法を改正し、特措法第10条の「税別であると誤認されないための措置を講じていれば税込価格を表示することを要しない」とする趣旨を盛り込み、現状の維持を要望している。
▼総額表示を考える出版事業者の会
「総額表示の一律義務化に反対し、消費税法の改正を求めていく提言」
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