朝日新聞社×出版社 読書推進プロジェクト「じんぶん堂」1周年、紀伊國屋書店でブックフェア開催

2020年12月15日

紀伊國屋書店で実施しているじんぶん堂ブックフェア

 朝日新聞社が出版社とともに、人文書の魅力をより広い層の人たちに伝える読書推進プロジェクト「じんぶん堂」が、スタートから1周年を迎えた。開設した人文書専門の特設サイトも、順調にページビューを伸ばしている。現在、1周年を記念したブックフェア「今こそ読みたい人文書セレクション」を、紀伊國屋書店の東京・大阪・広島・札幌の4店舗で開催している。

 

 朝日新聞社は昨年11月、発起人の晶文社、筑摩書房、白水社、平凡社とともに人文書の魅力を伝えるプロジェクトを開始。朝日新聞社のバーティカル・メディアの一つである本の情報サイト「好書好日」の中に、特設サイト「じんぶん堂」を開設した。

 

 1年後の現在、明石書店、春秋社、世界思想社、創元社、大和書房、朝倉書店がプロジェクトに加わり、全10社に。これらの加盟出版社や書店などが、サイト「じんぶん堂」を通して、人文書のおもしろさや奥深さを自ら記事化し、さまざまな切り口で紹介している。

 

加盟出版社などが29点を選書

 

 1周年を記念した紀伊國屋書店でのブックフェアは、加盟出版社のほか、出口治明氏(立命館アジア太平洋大学〈APU〉学長)や辻田真佐憲氏(作家、近現代史研究者)といった著名人、紀伊國屋書店「じんぶん大賞」選考委員を務める書店員らが、2020年の今だからこそ読んでもらいたい人文書を選び、「おすすめコメント」ともに紹介している。

 

 選書された書籍は、『社会心理学講義:〈閉ざされた社会〉と〈開かれた社会〉』(筑摩書房)『原子力時代における哲学』(晶文社)『哲学トレーニングブック』(平凡社)『ホモ・デジタリスの時代─AIと戦うための(革命の)哲学』(白水社)など、哲学や歴史、社会について考える書籍29点。

フェア対象書籍の推薦コメントや「じんぶん堂」 おすすめ記事をまとめた小冊子

 

 これらのフェア対象書籍の推薦コメントや、サイト「じんぶん堂」で紹介しているおすすめ記事をまとめた小冊子も作成。フェア実施書店の店頭で無料配布されているほか、紀伊國屋書店サイトのイベント告知ページでも公開されており、ダウンロードすることができる。

 

 フェアは新宿本店、梅田本店、広島店、札幌本店で、それぞれ12月中旬または来年年明けから中旬まで開かれている。

 

今後も書店でフェア実施を

 

 「じんぶん堂」のビジネスディレクターを務める朝日新聞社・竹内誠人氏によると、コロナ禍前に編集者によるトークイベントを開催したが、「書店でのブックフェア開催は今回が初めて」。

 

 「じんぶん堂」プロジェクトは当初から、サイトを起点に、イベントやフェアなどリアルの場にも積極的に出ていくことも目指している。「今回はコロナ禍もあって店舗数を絞ったが、来年からはもっと、他の書店さんも含めてご協力いただきながら、人文書をキーワードにしたフェア展開などを実施したい」と語る。

 

新たな本との出会いの場に

 

 今年はコロナ禍に直面し、新しい生活様式や働き方、人間関係など、人々の動きや考え方がこれまでと大きく変わった。その中で、これまであまり手に取ることがなかった人文書に、今後の生き方のヒントなどを求める人も増えているのではないだろうか。

 

 「じんぶん堂」が1周年を迎えて、朝日新聞社・山田裕紀バーティカルメディア・シニアエディターは「当初の見込みより20~40代を中心にサイトへのアクセスも多く、人文書を読んでみたい、手に取りたいという人たちが相当数存在することも分かった。専門的な人文書は都市部の大きな書店以外では手に取ることが難しいが、そんな書店にいけない人たちにも、新たな本に出会える場を提供できている」と手応えを感じている。

 

 そのうえで、「じんぶん堂は、出版業界全体と一緒になって読書を推進していくプロジェクト。今後も各出版社に声をかけながら、加盟社を増やしていきたい」と考えている。

【増田朋】