大修館書店は10年ぶりの改訂となる『明鏡国語辞典 第三版』を、12月10日取次搬入で発売した。発行部数は約10万部。箱や帯をポップなデザインにしたほか、本文書体をゴシックとするなど中高校生になじみやすい体裁とし、話し言葉から改まった言い方を調べる「品格」欄や、漢字の読みを調べる「読み分け」欄など学習に役立つ項目を盛り込んだ。
『明鏡国語辞典』は元筑波大学学長で日本語学の研究者・北原保雄氏が編者となり、2002年に初版を発売。10年に第2版を刊行して以来の改訂となる。
収録語数を追求するよりも項目解説を充実させることに主眼を置き、学校現場でも「ここまで裏付けのある辞書はほかにないと一貫した評価が続いている」(伊藤進司取締役販売部部長)という。
第三版は「サブスク」や「バズる」「リスケ」など新たに約3500語を増補し収録語は約7万3000語。
これまでの国語辞典にはみられなかった本文ゴシック体を採用。中高校生になじみのある書体として導入したが、同じ級数でも文字面が大きく読みやすくなることから「年配の方からも読みやすいと好評です」と担当する編集第一部・松岡澪さん。
また、スミと赤の2色刷にして、詳しく長くなる解説のマークを色分けしたり、仕切りを入れるなどして目的の場所を探しやすくした。
松岡さんも「一覧性がある紙ならではのレイアウトにしたことで、編集している私自身も使いやすいと感じます」と述べる。
さらに、50音順に慣れていない中高校生も多くなっていることから、小口の50音表示に「あ」「か」「さ」と仮名を入れるとともに、「いうえお」の位置にも印を入れた。
これまで別冊だった索引は、学校現場からの「教室に落ちていることが多い」との指摘を受けて一体化した。
このほか、「作文で話し言葉を使う生徒が多い」という教員の課題に応え、話し言葉からTPOに応じた言葉を探せる「品格」欄や、「薪」の読み「マキ」「タキギ」の使い方などを解説する「読み分け」欄といったコーナーを新設。
編集第一部・正木千恵部長は、「『読み分け』は専門家がルビ付きコーパスなどを駆使して分析しました。第一線の研究者が編集委員や執筆者として携わっているこの辞典ならでは」と胸を張る。
学校向けの販売促進は、秋口からパンフレットの配布を開始し、11月終わりから見本の提供を始めている。
「今年は高校で先生が集まる採用検討会が開けないなどコロナの影響もあり、早めの営業活動を展開しています」と販売部・菊地望氏。本格的な需要期を迎える来春の学参シーズンに向けて、積極的な宣伝や書店店頭施策を実施する予定だ。
「ネットで調べられる時代に、有料で紙ならではの工夫をかなり追求できたと思います。来春に向けて書店の辞書売場を盛り上げていきたい」と伊藤取締役。
来年1月から始まる大学入学共通テストや22年に予定される高校の学習指導要領改訂といった大きな変化を見据えて、販促活動に力を入れていく考えだ。