日本書籍出版協会(書協)と日本雑誌協会(雑協)は12月21日、2021年4月から義務化される消費税の総額表示について、出版社向けのガイドラインをホームページで公開した。
ガイドラインは総額表示に対応する場合を想定し、書協と雑協による税制専門委員会が制作したもの。それによると、総額表示への移行は新刊、増刷、常備寄託品の入れ替えなど、可能なものから各社が実施するとして、市中在庫の回収や返品、店頭での差し替え対応などは必要ないとしている。また、消費税の税率変更が行われた際の対処については、書籍・雑誌への軽減税率適用を求めていくとした。
来年4月の総額表示義務化、ガイドラインで対応例を紹介
来年3月31日に消費税転嫁対策特別措置法が失効し、出版物にも適用されていた税別価格表示(例:本体○○○円+税)の特例措置が終了する。それに伴って、4月1日からは消費税法に基づき、総額表示が義務化される見通しだ。なお、総額表示義務の違反について、消費税法上の罰則規定は設けられていない。
消費税法で総額表示を行うのは、消費者に資産等を譲渡する事業者(小売・書店)としているが、再販出版物の場合は再販契約上、出版社が定価を表示し、再販価格を指示していることから、実質的に出版社が責任を負うことになる。
書協と雑協は、財務省等に対して総額表示の義務免除の継続・延長を求めてきたが、消費税の総額表示に対応する場合を想定し、04年公表のガイドライン「消費税総額表示への対応について」を踏まえ、新たなガイドラインを20年12月21日に発表した。書協と雑協のホームページで公開されているガイドラインでは、総額表示の対象について次のようにまとめている。
①総額表示は、「不特定かつ多数」へ出版物(あらかじめ価格を表示する)を販売する場合に生じる義務であり、消費税額を含めた価格を小売り段階で消費者に示す必要がある。書店店頭での読者への販売などが対象となる。
②事業者間の取引(B to B)、「特定かつ少数」「不特定かつ少数」「特定かつ多数」への販売は総額表示の対象外。外商等による図書館や学校、学校図書館への販売についても総額表示の義務は生じない。
③インターネット書店では、販売時にWebサイト上で総額が表示されていれば、配送する個別の商品に総額表示を行う必要はない。書店での客注品についても、注文時に広告やチラシ等で消費者に総額が知らされていれば同様。
④新聞広告やチラシについて、「不特定かつ多数」への販売目的となるため総額表示が必要となるが、事業者に向けたカタログや目録の場合は、総額表示の義務は生じない。
⑤書店やCVS等の売り場において、「この棚の商品はすべて定価○○○円」と表示したり、出版社による箱型の専用ラックに「各巻定価〇〇〇円」等と総額が表示されていれば、個々の商品への総額表示を必要としない。
スリップのボーズ部分など、何らかの形で総額表示を
総額表示の方法については、「スリップのボーズ部分」「オビ(帯)」「カバーや雑誌本体の表1・表4」「シール」など、読者が出版物を開かずに一見して分かるよう、何らかの形で1カ所でも総額表示があれば有効となる。
シオリ(栞)のようなものを挟みこんで、総額を表示する場合、ボーズのように総額表示部分を出版物からはみ出させ、見えるようにしなければならない。なお、スリップのボーズ部分などに総額表示をする場合、書籍の本体やカバーについては従来通りの表記で問題ない。
このほか、ISBNコード、2段バーコードの表記は総額表示の義務化後も変更はなく、従来通り本体価格のままとし、図書コード管理センターの規定に従う。
定価(総額)の表示にあたっては、「⑩」または「税10%」のように税率をあわせて表示することで、店頭での混乱を回避できると推奨している。
市中在庫の回収・返品は不要、可能な限りの対応を求める
既刊書の総額表示については、新刊・増刷の総額表示に準じる。そのうえで、再出荷時など、各社が実務上可能な限りにおいて、自主的に対応するべきとした。
また、店頭の市中在庫についても回収や返品、店頭での差し替え対応は不要としている。当面は新旧価格の本が混在する状況が続くとしたうえで、読者の混乱回避のため、行える範囲で総額表示への対応を呼びかけている。
・日本書籍出版協会
ホームページ=https://www.jbpa.or.jp/
・日本雑誌協会
ホームページ=https://www.j-magazine.or.jp/
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