【アフター・コロナのデジタル広告⑩】注目はプロモーションメディアのデジタル・シフト

2020年12月25日

みずほ銀行産業調査部が公開した「日本産業の中期見通し(メディアサービス)」

 

 2020年も残すところわずかとなり、21年以降の広告需要の見通しに注目が集まりつつある。21年がアフター・コロナとなるかどうかは、先行き不透明感が強いものの、グローバルの動向を参照しながら国内のデジタル広告市場の行方を展望したい。

 

国内外から見る21年デジタル広告市場の展望

 

 英広告大手WWP傘下のグループエムによると、20年の世界の広告市場は5・8%減少するものの、デジタル広告は8・2%の成長が見込まれている。新型コロナウイルスの影響で、過去6年間の20%台成長には及ばないものの、1930年代に起きた世界恐慌以来最悪となる世界経済の状況に鑑みれば、広告市場における唯一の成長分野といえるだろう。

 

 21年の世界の広告市場は12・3%の成長を見込んでおり、各国予想は米国11・8%、中国15・6%、日本12%、英国12・4%、ドイツ4・6%、フランス7・2%、韓国1・6%、カナダ15・1%である。またアマゾン、フェイスブック、グーグルなどの純粋なメディアオーナーが世界のデジタル広告市場に占める割合は、15年の30・6%から21年には61%に達する見通しである。

 

 米国の20年の広告市場は、政治広告を除く広告支出が前年比9%減の2145億ドルと8年ぶりに減少するものの、デジタル広告は1100億ドルと5%の成長が見込まれている。米国の広告市場全体におけるデジタル広告の割合は51%と初めて過半に達し、21年には55%に拡大する見通しである。

 

 一方、みずほ銀行産業調査部が公開した「日本産業の中期見通し(メディアサービス)」によると、20年の国内広告市場は、前年比11・6%減の6兆1320億円と推計されている。

 

 原因は、大手広告主による広告費削減に伴うテレビ広告の出稿が減少したほか、欧米と比べて媒体シェアの大きい屋外広告や、交通広告を中心としたプロモーションメディア広告の出稿が抑制されたことが指摘されている。インターネット広告もECサイト等における広告出稿が増加したものの、3・0%減少する見通しである。

 

 米国のデジタル広告の成長スピードには及ばないが、ユーザーのメディア接触行動における、テレビを中心とした既存マスメディアからインターネットメディアのシフトは確実に進展している。

 

 19年はインターネット広告費がテレビの広告費を上回ったことが象徴的なニュースとして扱われたが、引き続きインターネット広告はテレビを含むマスコミ四媒体のシェアやプロモーションメディアのシェアを取り込み、20年にはプロモーションメディアを超えて国内最大の媒体となることが予想されている。

 

 もっともインターネット広告が他媒体を取り込む、すなわちデジタル広告化するという意味において、プロモーションメディアは有望である。サイバー・コミュニケーションズの調査によると、20年の国内のデジタルサイネージ広告の市場規模は32%減の516億円であるが、24年には1022億円に成長する見通しである。

 

 デジタルサイネージ広告の配信先は主に「交通」「商業施設・店舗」「屋外」「その他公共施設」に分類される。20年は新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛により、デジタルサイネージと生活者の接触数が大きく減少した。しかし、鉄道車両における低コストのシステム導入や、商業施設における対面販売の代替手法としての拡大期待が高まっている。

 

米国で進む屋外 広告のデジタル化

 

 eMarketerの「USDigital Out-of-Home AdSpending 2020」によると、米国では屋外広告(OOH)のデジタル化(DOOH)が急速に進んでおり、20年は前年比で1・6%増、21年は19・2%増の見込みである。

 

 DOOH広告費は、20年の27億2000万ドルに対して、23年には38億4000万ドルにまで拡大すると見られている。米国のOOH広告費に占めるDOOHは15年には17%程度に過ぎなかったが、23年には42%に達することが予想されている。

 

 21年のデジタル広告の拡大要因の一つとして、従来のプロモーションメディアのデジタル化、データ・ドリブン型のシフトに注目したい。

【水巻リカ】