関西発 出版業界新春寄稿
チャレンジを続ける出版社と書店
新年、おめでとうございます。
せせらぎ出版は1985年創業、現在の出版点数274点。「私にしかできない出版社」を心がけて、細々と存続しています。第一の至上命令は「絶対につぶさないこと」。そのために、自費出版と、共同出版(自費出版に近いが、内容に応じて流通に乗せる)を重視して、経営を維持してきました。あわせて、私が挑戦してきた3つのテーマについて、書いてみます。
社内組版と編集自動化(せせらぎスクリプト)
わが社では、外注費を抑えるためと、組版を自分で行うことにより編集の効率化を目的として、インデザインによる組版をほぼ100%社内でやってきました。
そして、インデザインでは、検索・置換の強力な機能を活用して、「正規表現・複数・一括置換」ができるせせらぎスクリプトを開発し、原稿整理や表記の統一を半自動化してきました。そのことで、初校ゲラ出しの日程が劇的に短縮できました。このノウハウは、出版労連などの学習会で公開してきました。
「オンデマンド印刷」と「POD出版」の活用
出版物の従来印刷では、初版を3000部以上刷らないと本の販売単価が高くなり過ぎる(標的な単価にすると赤字になる)という宿命がありました。
ところが、近年、技術的な向上がめざましい「オンデマンド印刷」を活用することで、初版部数、100部、200部、300部といった少部数の初版印刷でも採算がとれるようになったことに注目し、積極的にオンデマンド印刷を採り入れました。
当然、新刊委託は極力抑え、注文扱いを中心にしています。当初のオンデマンド印刷では、カバーや見返しができませんでしたが、オプションで対応してくれる印刷所も増えたので、可能となりました。このことにより、倉庫を大幅に縮小できました。
また、アマゾンなどのPOD(プリント・オンデマンド)出版(アマゾンサイトで読者が注文すると、アマゾンがその1冊だけを印刷・製本し、すぐに納品する。完全受注生産なので在庫ゼロ)も積極的に活用し、出版の敷居が下がったと喜ばれています。
出版ネッツとの連携
出版フリーランスのネットワークである「出版ネッツ」に私も加盟し、積極的な連携をはかってきました。ライター、校正者、イラストレーター、漫画家、カメラマンなど豊富で優秀な人材がいるので重宝します。
企業や自治体の年史制作など、複数業種の連携が必要な場合は、プロジェクトチームをつくって、協同受注などもおこなってきました。
これらが、私が挑戦してきたテーマです。本年もどうぞよろしくお願いいたします。