エディション・エフ(京都市・岡本千津社長)は2020年12月25日、作家の幼少期の記憶を元に紡いだ家族の物語『月の家の人びと』(砂岸あろ)を発刊した。
同書は、かつて作家の志賀直哉が『山科の記憶』などの作品を書き、その後、著者の祖父母が移り住んだ京都・山科の家を舞台にしたささやかな家族の歴史。自身の幼少期の記憶を一つのきっかけに、1960年代の山科の風景に思いをはせながら長年温め書き上げた。
半世紀前の日本の一地方都市の風景、風俗が行間から感じられ、一抹の懐かしさを覚えるとともに、人物たちの心の動きへの共感によって、いつの時代・世代にも通ずる人の生と死、心身の成長、恋心の芽生えを感じ取ることができる。
同社の岡本社長は、「登場人物はそれぞれ個性にあふれていながら、読者が自分を投影しやすい人物像に仕上がった。人間の営みをしみじみと味わえる物語」と話しており、読者からも「言葉が洗練されていて、詩的、絵画的で美しい物語」、「それぞれの年代の気持ちをおもい出させてくれる」と反響が寄せられている。
【櫻井俊宏】