朝日新聞創刊142周年記念式が、1月25日に開かれた。今年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言下で迎えることになり、東京本社、大阪本社、福岡本部など式典参加者がいる会場をオンライン中継し、渡辺雅隆社長が「困難を乗り越えてきたチャレンジ精神に思いをはせ、前に進む決意を新たにしよう」とあいさつ。2020年の社賞とCSR推進賞、シリウス賞の受賞者が表彰された。渡辺社長のあいさつ要旨は次の通り。
年頭のあいさつでも触れましたが、今年は朝日新聞が紙齢5万号を迎える年でもあります。1879年(明治12年)に創刊して以来、明治、大正、昭和、平成、そして令和と、歴史を刻み続け、人々の喜怒哀楽に寄り添いながら、紙齢を積み重ねてきました。
5万号となる3月2日はくしくも、昨年亡くなった村山美知子前社主の命日の前日にあたります。社主制度はなくなりましたが、創業者を顕彰するために、また「人々の耳目(じもく)になろう」「時代の羅針盤になろう」という創業の精神を引き継いでいくために、社賞として新たに村山龍平賞、上野理一賞が創設されました。
きょうは創刊記念日です。創業者のベンチャー精神と、幾多の困難を乗り越えてきた先輩たちのチャレンジ精神に思いをはせながら、「みなさまの暮らしに役立つ総合メディア企業」を目指して前に進む決意を、社員、グループ企業、ASAのみなさんとともに、新たにしたいと思います。
村山龍平賞、上野理一賞創設
では、社賞の紹介に移ります。まず、新たにできた「朝日新聞社賞~村山龍平賞~」です。この賞はスクープなど、新聞や出版物、デジタルメディアにおける編集系分野での功績などに与えられます。
その記念すべき初回の受賞は、東京本社経済部・社会部による「三菱電機へのサイバー攻撃のスクープと関連報道」です。大企業の、しかも防衛や社会インフラといった機密性の高い情報が標的にされたサイバー攻撃の存在を、高度な専門知識や人脈を駆使した取材で明らかにしました。本社の取材力、調査報道の力を改めて示してくれました。
次に、「朝日新聞社賞~上野理一賞~」です。この賞は、企業価値向上の取り組みなど、経営や業務改善への貢献などに贈られるものです。初回は、「『東京100days 新型コロナウイルスの記録』『ノモンハン 大戦の起点と終止符』など、大型紙面とデジタルを連動させたプラットフォーム『プレミアムA』」に贈られます。
東京・大阪の編集局とコンテンツ編成本部、朝日新聞メディアプロダクションのクリエイティブチームが一体となって取り組んでくれました。とっておきの深掘りしたニュースを、臨場感たっぷりに伝え、没入感を感じてもらう、「新しいニュース体験」を創出してくれたと思っています。
続いて、CSR推進賞に移ります。SDGs大賞は、朝日学生新聞社の「小中高生と考えるSDGs」です。朝日小学生新聞は20年4月から「SDGs地球の教室」を毎週掲載し、朝日中高生新聞でもSDGs関連記事を積極的に展開し、別刷りを全国の小学校に配布しました。落合陽一さんの夏休みの小学生オンラインイベントには約450人が参加し、「ともに考える」取り組みを実践してくれました。
CSR推進大賞は、「タブロイド別刷り『知る新型コロナ』第1~3弾」です。編集局、販売局、製作本部、メディアビジネス局に贈られます。コロナ禍では、デマや根拠があいまいな情報があふれ、人々を戸惑わせました。そうした不安にこたえるために、信頼できるニュースや情報を別刷りにまとめ3、5、6月に全戸に届けました。取り置いておける紙ならではの特性をいかし、タイムリーに読者のニーズにこたえました。
「奨励賞(SDGs大賞)」は、ASA糸田、ASA添田の「障害者就業サポート」です。福岡県のASA糸田とASA添田は障害者福祉施設と提携し、古紙回収や折り込み業務で20年以上も就業支援を続けてきました。まさに「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を実践する、素晴らしい取り組みだと思います。
「奨励賞(CSR推進大賞)」は、「『#(ハッシュタグ)みんなで栄冠』プロジェクト」です。デジタル・イノベーション本部アライアンス事業部、CSR推進部、大阪本社代表室、知的財産室に贈ります。
昨年夏の甲子園はコロナで中止になりましたが、開会式があるはずだった8月10日に、全国で「栄冠は君に輝く」を一斉に演奏し、部活ができなかった中高生らにエールを送りました。私も見ましたが、気持ちのこもった、胸が熱くなる企画だったと思います。
ジェンダー平等特別賞も新設
次は「ジェンダー平等特別賞」です。当社は昨年、業界に先駆けてジェンダー平等宣言を発表しました。その取り組みを推進するために新たに創設された賞です。第1回は「国際女性デー・キャンペーン『Dear Girls』の展開と進化」に贈ります。受賞者は編集局、コンテンツ編成本部、総合プロデュース本部、メディアビジネス局、販売局、イベント戦略事務局です。
Dear Girlsは17年から3月の「国際女性デー」を中心に発信し、#Me Tooや無意識の偏見など新たな課題を多角的に報道してきました。
広告とも連動し、社員、読者、クライアントが手を携えて課題解決を模索していくモデルにもなったと思います。
最後に「シリウス賞」です。「本賞」は、中津支局長(大分県)・大畠正吾さんです。関心の幅広さと、優しい目線の記事が高く評価されました。フットワークが軽く、早朝の発生ものでも現場へ走り、若手の手本となってくれているとお聞きしています。
「特別賞」は長野総局の山岳専門記者、近藤幸夫さんです。みなさんご承知の通り、山の世界ではたいへん有名な記者です。この1年は、国の特別天然記念物ライチョウの「復活作戦」を取材されました。系列局との番組制作にも貢献し、当社が進める協業のよいお手本にもなってくれました。
以上、受賞されたみなさん、本当におめでとうございます。ほかのみなさんにとっても、それぞれの仕事に活かせるヒントを感じ取ることができたのではないでしょうか。みんなで受賞を喜び、明日への「力」にしたいと思います。