Web商談会実行委員会は4月5~23日にかけての3週間、3回目となる「書店向けWeb商談会2021春」を開催する予定だ。商談方法は前回に引き続きWeb会議システム「Zoom」を使用し、出展料は6000円(税別)。出展の申し込みは応募フォームから2月26日まで受け付けている。1月25日には出展社向け説明会がZoomで開かれ、商談会のシステムや入稿データの仕様、合同フェアなどの企画についての紹介が行われた。
「書店向けWeb商談会」は、コロナ禍によって既存の書店営業や商談会などが難しくなったことを受けて、パイ インターナショナルの三芳寛要社長を実行委員長とした出版社の有志によって始まったオンライン商談会。
前回の2020年10月開催では、出版社や玩具メーカーなど149社が出展。北海道から沖縄まで235人の書店員が参加し、779回の商談が行われた。取引金額も2000万円を超え、最も取引額の大きかった社は600万円超となった。
参加書店の8割以上が「次回も参加したい」と好評だった一方で、1回も商談を行わなかった出展社が1割程度あり、次回の課題となっていた。
参加書店はウェブ上での注文が可能に 二つのサービスを採用
そこで、2021年春のWeb商談会ではZoomでの商談に加え、参加書店はウェブ上で注文することができるようになった。カランタの出版支援クラウドサービス「一冊!取引所」、とうこう・あいのオンライン受発注システム「BookCellar ( ブックセラー)」からそれぞれ受け付ける。
仮に商談が行われなかったとしても、各々のプラットフォーム上で出版社が出品したお薦めの1冊を書店は注文できる。また、どのような方法で実績を残すことができるのか、事前に実行委員会からノウハウを提供、集客期間中のフォローアップも行う。
2月26日まで出展社公募、集客ノウハウの共有も
1月25日に開かれた説明会では、三芳実行委員長が開催日程について説明した。それによると、1月11日~2月26日までを出展社公募期間、3月2日に出展社向け集客ノウハウ説明会、3月8日に書店向け告知をおよび商談予約を開始、4月5~23日までの3週間を開催期間としている。また、最終日の4月23日には出展社と参加書店でオンライン打ち上げを開く予定だ。
書店員と商談を行う日程調整には、スケジュール管理サービス「Calendly(カレンドリー)」を使用し、出展社側は各自で商談を行う時間帯や曜日を指定することができる。
また、出展社は申込の際に実行委員会への参加も募っている。現在、実行委員会は実行委員長が三芳氏(パイ インターナショナル)、出展委員長が丸山清乃氏(絵本館)と石井千絵氏(同)、集客委員長が箱守剛氏(東京美術)、企画委員長が佐藤健二氏(ブロンズ新社)、合同フェア委員長が渡辺佑一氏(カランタ)、広報委員長が西村安曇氏(西村書店)、システム委員長が平井由規雄氏(とうこう・あい)、事務局長が鈴木愛菜氏(同)。
出展社から実行委員会への問い合わせや連絡は、運営を円滑に進めるため、基本的にメッセージプラットフォーム「Slack(スラック)」を使用している。説明会では各種ツールの使い方についても解説が行われた。
合同フェア開催 出展社が本とアイデアを募る
今回は合同フェア委員会が立ち上がり、「一冊!取引所」の機能を活用して合同フェアを実施する。参加は任意で、フェア出品料は1企画参加および書籍1点新規登録につき1000円+税(請求はカランタから)。出品書籍はカタログページ掲載書籍に限らず登録可能。カランタ側からのPR支援も行う。出展社同士で本とアイデアを持ち寄り、さまざまな合同フェアを企画する予定だ。
スケジュールは、出展社からフェア企画アイデアを2月1~28日まで募集(Slackを利用)。3月1~20日に合同フェア案をまとめ、参加したい版元を募る。3月22~30日に企画として成立したものを決定し、受注できるようリスト化を準備。4月5~30日に「一冊!取引所」内の特設ページで書店に提示、注文できる状態とする。また、商談でも活用できるよう、エクセルリストやチラシPDFも用意する。
書店経営者に働きかけ、リアル商談会の実行委員と意見交換
集客委員会からは、「書店大商談会」や「BOOKE XPO」などリアル商談会の実行委員にアプローチし、協力体制を築くために意見交換していると報告。書店経営者などトップに働きかけ、現場の書店員様が参加しやすい環境づくりを目指すとしている。
このほか、プッシュ型営業や商談数・金額を増やすためのノウハウを紹介。企画委員会で進めているオンラインイベントについては、前回好評の児童書・芸術書担当書店員向け3分出版社プレゼンに加え、実用書やビジネス書などほかのジャンルでも企画予定。また書店員が登壇するトークイベントも予定している。
〈カランタ 出版支援クラウドサービス「一冊!取引所」〉
カランタが担当する合同フェア注文書はジャンルごと、テーマごとにグルーピングして書店が担当者ごとに選びやすい形にした。カタログページに掲載されている商品には、「一冊!取引所」内の該当書籍にリンクバナーをはる。
書店の取引形態として、取次経由、直取引(トランスビュー扱い)、直取引(自社)の3つから選択。書店はどのように仕入れたいか選ぶことができる。参加する書店は発注する際に、リードリストを作成し、他の参加書店と公開や共有することが可能だ。そのリストを見ながら自らのリードリストを組み替えたりもできる。
「一冊!取引所」を担当する渡辺祐一氏は、前回の商談会で出版社ごとに商談回数にばらつきがあったことを念頭に、商談会に参加するすべての出版社にとって参加している状態を目指している。新しく導入するウェブ注文機能で、「ここがきっかけに、(その後に)フェアが開催されるようになったり、よりお互いの顔がみえる形」となり、出版社と書店の間のコミュニケーション活性化につながることを期待する。
「一冊!取引所」内で互いがチャットを介して情報交換を密にすることで、「たとえZoom商談が0回だったとしても(商談金額は)何万円になった、ということも起こるのではないか。進化するWeb商談会にお役に立てる」と話す。今後は、「一冊!取引所」を通じての直取引の代行も考えているという。
〈とうこう・あい オンライン受発注システム「ブックセラー」〉
とうこう・あいのブックセラーは、トランスビューと共同開発した書店と出版社をつなぐオンライン受発注システム。ゆえに独立系出版社のユーザーが多いことも特徴。18年10月にサービスを開始し172社、3175書店が利用する(2021年1月末時点)。
鐘ヶ江弘章社長は「業務システムとして使いやすさを追求している」と話す。「一回使っていただくと注文履歴が残ったり、発送の通知が入るので安心感をもってもらえている」(同社・事業開発部Webサービスディレクター東郷美恵氏)。ウェブ上で受発注は完結できるが、ブックセラー以外のチャンネル(電話やファックス、メール)で受けた注文も集約することができる。昨年10月の流通冊数は3万5000冊で総額9300万円ほど。利用する書店数や新刊点数によって伸び率に幅はあるが、コロナ禍の影響で数字が上積みした。
現在システム利用料は出版社も書店も無料。今後、書店は無料を継続するが、出版社については一部広告サービスなどの導入を視野入れている。元々とうこう・あいは出版広告を生業にしてきたことと合わせて「3000書店以上が登録しているので、出版社はブックセラーを使って書店に対してピンポイントに本の情報を告知できる」(鐘ヶ江社長)を強みとして、これからも生かしていく。
今回の書店向け商談会においては、出版社をまたいだ合同注文書機能を開発・提供する。どのような動きがあるか期待したいという。カランタと共同でシステム運営を担うが、「書店と出版社の注文の間にある課題を起点に、よりよい出版流通のシステムを目指していくことは一緒」としている。