社会に貢献した優れたジャーナリズム活動を顕彰する早稲田大学の第20回「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」の受賞者が2月16日、発表された。大賞には西日本新聞社、毎日新聞社の各報道、集英社の書籍が選ばれた。
20年度の同賞は、応募・推薦された147作品の中から、公共奉仕部門と草の根民主主義部門のそれぞれで「大賞」3作品、文化貢献部門を加えた3部門で「奨励賞」3作品が選ばれた。
公共奉仕部門の大賞に選ばれたのは、西日本新聞社の「かんぽ生命不正販売問題を巡るキャンペーン報道」。郵便局で保険料の二重払いや払い込み済みの保険を解約させるなど、詐欺まがいの方法で高齢者などを騙していた実態を明らかにした西日本新聞の記事は「放置されれば被害がさらに広がっていた可能性もあり、報道の意義は大きい。新聞報道はさらに、不正の背景にも切り込んだ。政治が果たす役割をも示唆した一連の報道は、まさに大賞に相応しい」と評価された。
同じく公共奉仕部門の大賞は毎日新聞統合デジタル取材センターの「桜を見る会」追及報道と、『汚れた桜「桜を見る会」疑惑に迫った49日』の出版~ネットを主舞台に多様な手法で読者とつながる新時代の試み(発表媒体=毎日新聞ニュースサイト、毎日新聞出版)が選ばれた。
「ネット報道らしいソーシャルメディアの活用や、書籍『汚れた桜』の刊行イベントの記事化など、95本もの記事を発信して告発を続けた。権力側の世論操作技術が巧みになるほど、それに抗う技術がジャーナリズムには求められる。継続的な報道の力を示した例として大賞に値する」とした。
また、草の根民主主義部門の大賞は書籍『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書)が選ばれた。「数々の証言の強烈なインパクトとともに、現在の日本へ警鐘を鳴らし問いかける優れたノンフィクション」と評価された。
そのほか、公共奉仕部門の奨励賞は書籍『ふくしま原発作業員日誌 イチエフの真実、9年間の記録』(朝日新聞出版)に、草の根民主主義部門の奨励賞はNHKのBS1スペシャル「封鎖都市・武漢~76日間 市民の記録~」に、文化貢献部門の奨励賞は静岡新聞社の報道「サクラエビ異変」に決まった。