昨年の学参・辞典市場は新型コロナウイルスによる書店休業や臨時休校で、3月に小学参の先食い需要が生じるなど、浮き沈みの激しい年となった。一方、中高生に限ると勉学に励む時期に変わりはなく、やるべきときに学参を購入していることが数字に現れている。小学校に続き、今年度は中学校の「新学習指導要領」が全面実施され、大学入試も、「大学入試センター試験」から「大学入学共通テスト」に切り替わって2回目を迎える。教育専門取次の日教販によるPOSデータやノウハウをもとに、2021年の小・中・高学参のポイントを解説する。
2021年度は中学校で「新学習指導要領」全面実施
2020年度に新しい学習指導要領が示され、教育改革がスタートした。「学習指導要領」は一定の教育水準が保てるように文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準。およそ10年に1度、改訂が行われる。小学校は20年度、中学校は21年度、高等学校は22年度から実施となる。
20年度に新学習指導要領が実施された小学校では、英語が教科化され、授業では「聞く」「話す」に加え、大文字・小文字の文字指導、語順の違いや文構造の気付きなども指導し、小学校を通じて600~700語程度の語彙の習得目標が示された。
21年度は中学校の「新学習指導要領」が全面実施となる。「英語」は小学校に引き続き重視されている科目で、4技能「話す」「聞く」「書く」「読む」のほか、習う英単語数はこれまでの1200語から1600~1800語に増加し、授業はオールイングリッシュで行う方針だ。また、内申点も重視されるようになる。そのため、中学校1年生からの積み上げに役立つ学参の提案が求められる。
20年度の大学入試は「大学入試センター試験」に替わり、「大学入学共通テスト」となった。当初は「英語民間試験導入」と「記述式問題の導入」を予定していたが、さまざまな問題から導入は24年度に見送られた。
小学校学習参考書の棚作り
小学校の学参は主に「準拠」「ドリル」「日常」「中学入試」の4ジャンルで構成されている。例年は3月の新学期、7月の夏休み、12月の入試のタイミングで売り上げが伸長する。特に夏休みドリルなど季節商品(準拠・夏休みドリル・総復習ドリル)が売り上げを牽引している。
ジャンル別の売上シェアを見てみると、新学期段階では「準拠」20%、「ドリル」39%、「日常」37%、「中学入試」4%。「準拠」の構成比が高くなっているのが特徴だ。
夏休みになると「準拠」のシェアは7%まで低下し、「ドリル」41%、「日常」44%、「中学入試」8%となる。入試時期は「準拠」6%、「ドリル」41%、「日常」43%、「中学入試」9%となり、新学期に比べて「中学入試」のシェアが倍増する。「ドリル」「日常」の構成比は年間を通して高く、両ジャンルで80%近くのシェアを保っている。
「準拠」は「算数」「国語」3~6年生を中心に
日教販のデータによれば、「準拠」は3~4月にピークを迎え、この2カ月間が「準拠」売り上げの年間50%を占めている。20年3月~5月のPOSで、「準拠」の科目別シェアを見ると、「算数」34%、「国語」27%と2科目で半数を占め、「理科」11%、「社会」10%、「英語」8%と続いている。
学年別の売り上げは「5・6年生」39%、「3・4年生」37%、「1・2年生」24%。まとめると、「準拠」の科目は「算数」と「国語」、3~6年生が売り上げの中心だ。
厚物参考書のメインは「算数」「理科」「社会」
厚物参考書は3月がもっとも売り上げ傾向が高くなる。科目別シェアは「算数」29%、「理科」29%、「社会」26%、「国語」8%、「英語」8%と並ぶ。厚物参考書は「算数」「理科」「社会」3科目が売り上げの主力となっており、90%近くを占めている。
総復習ドリルの学年別売上シェアは、「1・2年生」44%、「3・4年生」35%、「5・6年生」21%で、比率の高い低学年に向けて積極的な展開が求められる。
中学校学習参考書の棚作り
中学校の学参は大きく分けると「準拠」「日常」「入試」の3ジャンル。新学期から定期テスト~夏休み時期までが売り上げが伸び、秋から12月にかけての入試時期に再び売り伸ばしの時期が来る。
シェアを見ると、新学期は「準拠」41%、「日常」42%、「高校入試」16%。夏休みは「準拠」15%、「日常」42%、「高校入試」43%。入試時期は「準拠」11%、「日常」34%、「高校入試」55%。新学期の構成比は「準拠」が高く、「日常」の構成比は年間を通じて高い。また、入試時期は「入試」の構成比が5割を超える。
「準拠」のヤマ場は4月英数科目、1・2年中心
「準拠」の売り上げは4月にピークを迎え、年間の約40%を売り上げる。中学ワーク・トレーニングの科目別シェアは「英語」24%、「数学」23%、「社会」19%、「理科」17%、「国語」15%。学年別シェアは「1年生」43%、「2年生」34%、「3年生」23%。
厚物参考書は4科目均衡まずは「数学」「理科」を
厚物参考書は3~4月が売り上げのピークで新学期定番商材。科目シェアは「数学」25%、「理科」23%、「英語」22%、「社会」21%、「国語」9%。数・理・英・社の4科目が均衡している。
基礎レベル問題集は英・数と1~2年中心
超基礎レベル問題集は新学期から夏期にかけての必須アイテムとなる。科目の別売上シェアは「英語」38%、「数学」28%、「理科」14%、「社会」13%、「国語」6%。学年別売上シェアは「1年生」43%、「2年生」25%、「3年生」12%となっている。科目は「英語」と「数学」、学年は「1年生」と「2年生」が過半数を占める。
復習は「英語」「数学」が必須次いで「理科」と「社会」を
中学1・2年の復習ものは、3月(春休み)と7月(夏休み)が売り上げの大きなヤマ場となる。科目別売上シェアは、「英語」26%、「数学」23%、「理科」20%、「社会」17%、「国語」12%。英・数の割合が高くなっている。
高校学習参考書の棚作り
新学期・夏休み・入試のタイミングで売り上げが伸長し、年度版商品を除くと夏休みがピーク。入試時期は共通テスト・赤本学校別の補充が求められる。
高学参の構成は「英語」「数学」「国語」「理科」「社会」の大学受験6ジャンル。高学参ジャンル別売上シェアを見ると、新学期から入試にかけて全体的に英語の売上構成比が高い。夏休み時期から大学入試の売上構成比が高まる。入試時期は、大学入試が売上構成比の4割を占めるようになる。
20年における高学参定番3000銘柄の年間売り上げを見ると、上位20銘柄が売上高の80%を占めており、昨年のランキングを調べ、定番銘柄をしっかり展開することが重要だ。
また、高学参の棚作りは、細かくジャンル分けし、分かりやすいように棚差しプレートを掲示するなどの工夫が求められる。学年別・シリーズ別の小・中学参と異なり、高学参は科目別に並べる。特に「英語」は英単語、英熟語、英文法、英語総合など細分化するのが望ましい。