今野書店 フェアのテーマは「編集者」 売れ行き好調につき期間延長

2021年3月12日

出張編集室に座る竹田さん(左)とフェアを企画した花本さん

 

 東京都杉並区の今野書店はこのほど、1人の編集者をテーマにしたフェアを開始したが、SNSなどで話題となり、同店のフェアとしては異例の売れ行きになるほどの人気で、当初予定していた期間を延長することにしている。

 

 取り上げた編集者は柏書房の竹田純氏。読売新聞記者としてスタートし、映画館勤務、雑誌編集などを経て2016年に同社に入社。そこで初めて本格的に書籍編集を手掛けて4年ほどのキャリアだが、『パリのすてきなおじさん』(金井真紀、広岡裕児著)や『日本のヤバい女の子』(はらだ有彩著)などユニークな企画が注目を集めている。

 

 フェアを企画したのは昨年夏から今野書店で働き始めた花本武さん。売れ行きが低迷していたガイドブックのコーナーで展開したフェア「ユリイカVS文藝別冊」の結果が良かったことから、次に以前から考えていた編集者フェアを企画した。竹田さんとは読書会を通じて知り合いSNSなどで発信される情報に注目してきた。

 

 フェアは竹田さんが編集した書籍20点と他社刊行の「俺が編集したかった!本」15点を陳列。合わせてフェア用に作ったチラシ「編集者 竹田純の仕事と周辺」から、竹田さんが新聞記者時代に書いた記事のスクラップ、編集ノート、幼少期からの写真などまで展示する。

 

竹田さんが過去に書いた記事や子どもの頃の写真も展示

 

 フェアを開始したのは3月3日。週末を挟んで6日で展開書籍の売り上げが約80冊と良好で、取次経由の調達が追いつかず竹田さんが自社本を直納品するほど。花本さんは当初1カ月間を予定していたフェア期間を2カ月間に延ばす考えだ。

 

 竹田さんは週4、5日来店し、フェアコーナー脇に「出張編集室」と銘打って机を出している。ここで竹田さんと話した人はほとんど本を買っていくという。

 

 花本さんは竹田さんに白羽の矢を立てた理由を「大物編集者ではないですが、若くて仕事の軸が決まっていないが故に未知数なところが注目されると思いました。また、SNSでの発信力がある方なので、この人ならフェアを拡散してもらえるという期待もありました」と話す。

 

 実際、SNSをみて「出張編集室」に在席する竹田さん目当てに来店する著者や知人なども多い。

 

竹田さんは来店客とのコミュニケーションを大切にする(出張編集室の張り紙)

 

 一方、提案を受けて即座に引き受けた竹田さんは、「以前から編集室と書店が一体となったような個人書店がうらやましかった」と話す。「普通の人たちがどのように本を買っているのかが見える状況で本を作れば、独りよがりにならずにすみます。売場をみていれば本の作り方が変わると思ってお引き受けしました」。

 

 竹田さんには既に他の書店からもフェアの提案が来ており、一方の花本さんも同様のフェアを企画していく考えだ。