京都市北区が進める「船岡山を活かした魅力創出事業」と、2016年の京都本大賞にも選ばれた望月麻衣氏の人気シリーズ『京都寺町三条のホームズ』(双葉社)がタイアップしたイベント「船岡山を盛り上げたい!キャンペーン」が実施され、同作のファンや観光客の人気を呼んでいる。
京都市北区は、金閣寺に集中する観光客の分散化や、西陣地域の活性化などを目的に、船岡山や周辺の魅力を引き出す取り組みを始めている。その一環で望月さんに相談したところ、タイアップの快諾を得た。
文化通信の取材に望月さんは「当時、『京都寺町―』16巻の執筆中だったけど、原稿がなかなか進まなかった。話を聞いて、面白い、船岡山を舞台に書きたいと強く思った」と話す。その後、船岡山の中腹にある建勲神社などの取材を重ね、自信作に仕上がった。
ふたば書房・大垣書店も参加
キャンペーンの内容は、船岡山周辺のショップ、神社などを巡る「聖地巡礼!スタンプラリー」や、船岡山で撮影した写真をインスタグラムに投稿する「聖地でインスタ映え!フォトコンテスト」、さらに、ふるさと納税した人は、望月さんとのリモート・ティーパーティーに参加できるなど、ファンには格別の企画になっている。スタンプポイントやオリジナルサービス参加店には同区の大垣書店ビブレ店、ふたば書房紫野店、同社が運営する絵本カフェ「めばえ」も名を連ねている。キャンペーンは6月30日まで(ふるさと納税は12月31日まで)。
想像とリアルの融合を楽しんで
京都市北区役所の担当者は「望月先生の大人気作品とコラボレーションできることは大変光栄。船岡山周辺エリアの魅力を多くの人に知っていただき、地域経済の活性化にも繋げたい。また、特別な返礼品を用意したふるさと納税も企画している。全国のファンの皆さんから京都のまちづくりを応援してほしい」とコメントしている。
望月さんも「こんな大きなイベントになって驚く反面、今回の縁に感謝している。読書は景色を想像して、頭の中で旅ができる。そんな空想の世界とリアルが繋がる企画。感染対策に注意しながら船岡山周辺を巡ってほしい」と呼び掛けている。
京都本大賞の実行委員長を務める、ふたば書房・洞本昌哉社長は「一冊の本、ひとつの文学が、地域の活性化、少しオーバーに言えば地方創生に繋がる壮大な企画。京都だけが潤えばいいとは思わない。全国の各行政、または出版界でもヒントにして動いてみるのもいいのでは」と各地への広がりに期待を示した。
【堀雅視】
『京都寺町三条のホームズ(16)~見習いキュレーターの健闘と迷いの森/前編~』=文庫288㌻/本体630円
※『京都寺町三条のホームズ』=主人公の女子校生(真城葵)が、京都の寺町三条商店街に佇む骨董品店でアルバイトを始める。勘が鋭く、『寺町のホームズ』と呼ばれる骨董品店の息子(家頭清貴)と、客が持ち込む様々な依頼を受けるライトミステリー。
※船岡山=京都市北区にある約112メートルの丘。平安京へ遷都した第50代桓武天皇は船岡山の山頂から山城盆地を見渡して都を遷すことを決めたと伝わることから「京都始まりの地」とされ、「国見の丘」とも呼ばれる。「本能寺の変」の後、豊臣秀吉が船岡山を織田信長の霊地として定め、1880年、明治天皇の命により信長を祀る建勲神社が創建された。現在は、ハイキングスポットとして多くの人が訪れる。