世界文化社と世界文化ワンダークリエイトは3月2日、保育業界初となる発達支援の定期誌『PriPri パレット』をスタートした。同誌は2018年に発売した『PriPri 特別編集 発達支援』が好評だったことを受けて誕生。発達に課題を抱える子どもたちとその保護者を、保育者はどのように支援していけばよいのか。春・夏・秋・冬の年4回、季節や行事に合わせて「保育者が今知りたいテーマ」を豊富な写真とイラストで紹介していく。新定期誌に込めた想いを編集長・源嶋さやか氏に聞いた。
発達に課題のある子に特化 発売前からSNSで大きな反響
――発売前からSNSを中心として、大きな反響が寄せられていますが、これまでの経緯を教えてください。
季刊誌『PriPriパレット』は、本誌にあたる月刊誌『PriPri』の連載から誕生しました。世界文化社は、保育園や幼稚園等の先生向けに保育のアイデアマガジン『PriPri』を月刊で発行しています。季節ごとの行事や製作物など、さまざまな保育ノウハウを紹介し、刊行年数は今年度で21年目を迎えました。
特に2007年に始まった「発達障害を抱える子ども」をテーマとした連載が読者からとても好評でした。当初はモノクロ2ページで、掲載面も巻末だったのですが、反響の大きさを受けて、年を追うごとにカラー化や増ページ、絵カードの付録を付けるなど、より目立つ企画へと成長していきました。
『PriPri特別編集 発達支援』で大きな手応え
大きな契機となったのは、18年に発売した『PriPri特別編集 発達支援』でした。こちらも高く評価していただき、保育業界で「発達に課題を抱える子どもたちの情報」が求められていると実感しました。今も同書の売れ行きは伸びています。
そうした保育業界の声に応えるため、今年の春に季刊誌『PriPriパレット』をスタートしました。単行本ではなく、定期刊行物としてスタートしたことに大きな意義があります。保育園や幼稚園等は365日、季節ごとにさまざまな行事や活動を行います。一般書籍でカバーできない“旬な情報”を届けるためには、定期刊行物でなければならないという想いがありました。
保育園・幼稚園は、たくさんの色が集まる「パレット」
――雑誌タイトルの「パレット」にはどんな意味が込められていますか。
子どもたちは絵の具のように色とりどりの個性を持っています。園はまさに、たくさんの色が集まる「パレット」です。パレットで子どものありのままの色を輝かせてほしい。やがてパレットから飛び出し、自分色の道を描いて歩いていってほしい。そんな願いを込めた雑誌タイトルです。
――スタートにあたって、どのような形で園にアプローチされているのでしょうか。また、保育者以外の方も購入できますか。
ワンダーの販売代理店を通じ、園へお届けする直販ルートもありますが、一般の書店様で誰でも購入することができます。
春号発売の1週間前にTwitterなどSNSで発信したところ、瞬く間に広がり、たくさんの「いいね」をいただきました。「発達支援に関する定期雑誌ってなかったよね?保育士さんだけでなく、保護者も知りたい情報が目白押しみたい!予約しよ!」など、保護者の方々からも嬉しい声をいただいています。ホームページの情報を見て、「保育業界に必要な雑誌だ」と拡散してくれた方もいました。
発売前から話題となったこともあって、Amazonの初回搬入分は予約受付時点で完売し、年間定期購読の契約数についても好調です。
――3月に発売した春号では、どのようなことを特集されていますか。
3月2日に発売した春号では、「春の製作活動支援」「健康診断避難訓練を乗り切る視覚支援」「保護者と信頼関係を結ぶコツ」「1年を見通しておきたい就学準備」など、年度始めの春だからこそ知っておきたい情報を収録しています。
また、2大特集の「園の実践例で学ぶ! 多様な子たちがのびのび育つ環境づくり」「困っている子の理由と対応」は、園を訪問している専門家の先生が具体的な事例を紹介しています。
『PriPriパレット』は医学的な専門書ではなく、保育業界のために知識とアイデアを提案する雑誌です。読者にとって、分かりやすいコンテンツ作りを心掛けています。
また、巻末にはコピーしてすぐに使える「絵カード」などの支援ツール、「ぬりえ」などのあそび素材集を収録してあります。コピー機での使いやすさを意識して、『PriPriパレット』の判型はA4サイズとしました。
――月刊誌『PriPri』の編集ノウハウや培ったブランド力、類書とのシナジー効果はいかがでしょうか。
他社の競業誌もある中で月刊誌『PriPri』は、保育雑誌ナンバー1を10年以上キープしています。保育者の方々なら「PriPri」のブランドをよく知っているので、保育で使える本だと分かってくれます。
『PriPriパレット 春号』は発売後1週間で重版が決まり、幸先の良いスタートを切りました。また、既刊の『PriPri特別編集 発達支援』についても、発売から2年が経った今も好調な売れ行きを維持しています。
同じ18年に発達支援キット『PriPri発達支援 絵カード』シリーズの刊行が始まり、こちらも読者から好評をいただいております。
――「PriPri」ブランドには、どのような強みや特色がありますか。
他の保育雑誌にない強みは取材力です。実際に園に足を運ぶことはもちろんですが、Twitterを始めとするSNSも大きく活用しています。
フォロワーからご意見をいただき、SNSを通じて日頃から交流を深めることで、読者が何を求めているのかが分かります。Instagramでのライブ配信や募った読者との座談会を行い、多くの方に参加していただきました。
販売部数に結びつく適切な企画がピックアップできているのは、「PriPri」ブランドが保育者と共に悩み、信頼関係を築いているからこそです。これからも読者とのつながりを『PriPriパレット』の内容に反映し、保育業界の現場に寄り添っていきたいです。
――今後の刊行予定について教えてください。
『PriPri パレット』は年4回刊行の季刊誌です。3月2日に発売した春号「『できた!』が増える環境って?」を皮切りに、5月上旬に夏号「友だちトラブルを解決!」、8月上旬に秋号「無理しない! させない! 行事参加」、11月上旬に冬号「育ちと支援を引き継ぐには?」を刊行する予定となっています。
園は月間の指導計画に沿って動いているので、季節行事のアイデアを当月にお届けしても、保育者にとっては情報が遅すぎます。じっくりと読み、準備する時間を考えて、季節を先取りする刊行スケジュールとしました。
多様な子どもたちが“かがやく”インクルーシブ保育
――源嶋さんは長年にわたり『PriPri』の編集を手がけ、今春から『PriPriパレット』の編集長となられました。今までを振り返ったうえで、本に“込めた想い”をお聞かせください。
『PriPriパレット』の表紙には「多様な子どもたちがかがやく保育」というメッセージを表記しています。一人の「困っている子」だけを取り上げているわけではありません。一人ひとりの個性を大切にし、共に育ち合うことを目指すインクルーシブの視点を盛り込んでいます。
子どもにはそれぞれ異なる個性があります。発達の特性があったり、肌の色が違っていたり、身体にハンディキャップを抱えていたり、多様性があふれる社会のなかで、子どもたちが“かがやく保育”を実現したいとの願いを込めました。
園という場所は、家から出た子どもたちが最初に出会う社会です。親以外の大人や友達がいる社会の第一ステージが変われば、それから続いていく小学校の環境や地域社会も、少しずつ変わっていくのではないかと思うのです。
子どもたちの未来をより良くするために、保育者や保護者の皆さんと一緒に社会を変えていきたいです。現場の先生たちと理想を共有し、それを実現するための情報を私たちは届けていきたいと思っています。しかし、出版社と読者の間をつないでくれる書店さんがいないと道がつながりません。
届けてくださる書店員さんがあっての「本」だと思っています。出版社と読者、書店さんが一緒のチームとなって、多様性に満ちた社会を実現したいです。
発達支援の定期誌『PriPriパレット』
価格:1980円(税込)
刊行スケジュール:季刊(春・夏・秋・冬)
発行:世界文化ワンダークリエイト
発行・発売:世界文化社