日本出版販売は3月31日、〝これからの出版流通の100年〟を構築するために目指す「出版流通改革」の詳細について、5月28日にオンラインで開催する予定の「NIPPAN Conference2021」で発表することを明らかにした。その発表を前に、同社が取り組む「出版流通改革」の背景、目的、骨子を公表した。
それによると、まず、昨今の出版マーケットのシュリンクや書店数の減少に加えて「かねてより起きている出版流通における物流危機は現在も継続しており、当社における売り上げに対する運賃の割合は高騰し続けている」と説明。
「出版流通の持続性は危機的状況にあり、当社としても、全国津々浦々に出版物を届けるという使命を果たし続けることが難しくなってきている。特に、昨今の流通問題の根本的な解決には至らず、出版流通を担う取次会社として深く反省をしている」とした。
そのうえで、「100年先の未来も、街に書店と本があり続ける世界を創っていくために、当社は、抜本的な『出版流通改革』に取り組んでいく決意を、ここに宣言する」と強調した。
改革にあたってのキーワードとして、「オープン」と「テクノロジー」をあげる。「当社は垣根を設けず、様々なプレイヤーやデータと『オープン』につながり、これを源泉にサプライチェーンの全体最適を実現する。そのためには、テクノロジーによるイノベーションが急務と捉えており、当社はテクノロジーへの投資を拡大する」と明らかにした。
同社があげる喫緊のテーマは次の通り。
▽テーマ①「業界三者の収益を改善する」
単品レベルのマーケット情報をネットワーク上で共有し、市場ニーズに基づいた生産・流通・販売を実現する戦略として「www・project(トリプルウィン・プロジェクト)」を2001年にスタートし、業界SCMの構築に取り組んできた。
同社が提供しているマーケットツール「オープンネットワークWIN」に代表される業界横断の構想をさらに推し進め、各種マーケティングデータ・流通データをこれまで以上に幅広く、効果的に取り入れる。
同社だからこそのデータベースを基盤に、AIなどの最新テクノロジーを活用したサービスを提供する。業界のロスやムダの削減と需要の創出によって、書店・出版社の収益改善を実現していく。
▽テーマ②「ロジスティクスのテクノロジーを用いて持続的な配送を実現する」
将来にわたり出版物を全国に届け続けるため、出版業界の配送プラットフォームのオープン化を目指す。出版物の配送に関わるサプライチェーン上の制約を緩和することで、出版配送の効率化を図る。
加えて、出版物以外の様々な商材の配送に対しても、オープンな環境をつくることで、持続性をより一層高める。同社ではすでに、全国エリア別の配送データの詳細な分析を行った。この分析結果をもとに、実証実験を開始し、持続的な配送の実現に向けた取り組みを拡大させる。