日本出版販売(日販)は4月1日、東京・千代田区の本社5階会議室で2021年度入社式を開催し、役員が新入社員にエールを送った。式典は、先輩社員からの歓迎メッセージの映像に続き、奥村 景二社長があいさつ。新入社員代表による決意表明で入社式を締めくくった。奥村社長のあいさつ要旨は次の通り。
日販・奥村景二社長あいさつ(要旨)
入社おめでとうございます。新型コロナウイルスが依然として収束に向かわない中で、こうして誰一人欠けることなく、一堂に会して入社式を開催できることを、非常に嬉しく思います。
思えば一年前は、ちょうどコロナの感染拡大が叫ばれ始めた頃で、昨年4月1日の入社式も、やはり危険性が高いということで開催を見送りました。これは実は、日販が始まって以来初めてのことでしたが、今年はこうして入社式を行うことができ、本当に嬉しく思っています。
皆さんも今日から社会人です。全国的にもコロナの感染が再拡大し始めている状況ですので、それぞれしっかりとセルフコントロールをしてください。
私からは、今の出版業界や日販について、大切なことをお話しします。今日この場で全て理解することは難しいかもしれませんが、事実として、こうした状況にあるということを、少しでも頭に置いたうえで、研修に励んでもらえればと思います。
今、出版業界は変革期に差しかかっていて、私たちが扱う出版物の流通量そのものが減少しています。それによって何が起きるかというと、出版物を運ぶ効率が落ち、1冊あたりの運賃単価が高くなります。それが日販の経営に非常に大きなインパクトを与えています。
一方で、実はこのコロナ禍の1年間、出版物の店頭売上は、前年と比べて好調でした。しかし、この状態が今後も続くとは言い切れません。出版取次業の、本を販売するというビジネスそのものが成り立たなくなってきている中で、私たちが守ってきたルールや体制、習慣、また私たちの仕事の仕方そのものも、変えていかなければならないステージに来ています。
グループ全体に目を向けると、出版取次だけではなく新しい事業も拡大しています。例えば「箱根本箱」というブックホテル、日本緑化企画のグリーン事業など、いずれの事業においても、どこかに本が存在しています。これはやはり、日販がこれまで出版流通を担ってきたからこそできることであり、本と何かをかけ合わせ、二つが一つになることで、新たな価値が生まれます。
日販という会社も、出版流通だけでなく、新しい領域に踏み出して、新たな価値を作っていかなければなりません。簡単なことではありませんが、そこから大きな学びや経験を積んで、充実感、達成感を味わうことを、やりがいとしてもらえればと思います。
皆さんはこれから一か月ほどの研修を経て、それぞれの職場に配属されるというステップになりますが、そこで実践してもらいたいのが、まずは仕事を覚えること。次に、そこで覚えた仕事を「どうやったらやめられるのか」を考えることです。
矛盾しているようですが、現在提供している価値とは違う、新しい価値を生み出すために、仕事を作り変えるということです。こうした一人ひとりの意志や行動が、日販の新しいビジネスの原動力になります。今の日販は、破壊的なイノベーションをしていくべきですし、そういう人材を求めています。そして、だからこそ皆さんが入社したのだと思っています。期待に応えてくれると信じています。
ここにいる皆さんは、年齢層も広く、個性的なメンバーが揃っていると聞いています。それぞれの個性を大切に、うまく使い分けることで、人としての価値、仕事の価値を増やしていってもらえればと思います。
今日から社会人スタートです。ぜひ頑張ってください。